1.AAAタイトル

2015年10月11日 (日)

バットマンほど真実について知りたがりながら逆に遠ざかるキャラはいない「Batman Arkham Knight」感想・考察

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 漫画からスタートしたバットマンシリーズは映画・アニメなど様々なメディアにて独自の解釈の作品が生まれた。単なるメディアミックスというだけに留まらず、そのメディアでしか成立しない何かを捉えるほどの完成度を見せることも少なくはない。たとえばノーランの「ダークナイト」などなど…


 「Batman Arkham Knight」は漫画や映画のバットマンとは異なる、ビデオゲームならではの描かれ方をしている。でもフランク・ミラーの傑作漫画以降に付きまとっている正義や善悪の境界で苦悩するバットマンを描いているけれど、そこじゃない。他のジャンルでは見られないスタイルを追求していることが大きい。それは「バットマンを操ってオープンワールドのゴッサムシティを飛び回る」ということでもない。


 このゲームを作ったRockstadyはビデオゲームでしかできないアートスタイルとストーリーテリングを追求しようとしている。(自分のバットマン観測範囲だが)それはたぶん漫画や映画、アニメでは追及されてないところだ。


 すばらしい試みだ…アメコミのモダンエイジ期にリスペクトを送っているだろうクリストファー・ノーランの映画の試みにも重なる。だがこのゲームもノーランの映画と同じくらい「このメディアならでは」を追及する一方、本当のコアになる部分を落としている。

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2015年9月29日 (火)

「Witcher3 Wild Hunt」感想&考察 ヨーロッパ全土に広まる伝承がオープンワールドを覆いつくす

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 「Witcher」シリーズ完結編につけられたサブタイトル、ワイルドハント。世界を朽ち果てさせる闇の勢力であり最大の敵なんてファンタジーらしいわかりやすい存在なのだが、ところがこの作品に限ってはそれで終わらない。なぜなら民話や伝承を元にしたファンタジーの側面と、それが発想される元になる悲惨な現実がハーフになった世界観なのだから。

 ワイルドハントとはヨーロッパに広く伝わっている伝承だ。見たものに疫病や戦争をもたらす狩猟団のことを指す。北欧神話ともかかわりの深いこれは各地でディテールは異なるのだが、ここでは製作したCD projektの所在地であるポーランドはじめ中欧の解釈だろう不吉なものだ。


 主人公リヴィアのゲラルドはワイルドハントに追われるシリを探す旅を続ける。だがシリを追ってワイルドハントが通り過ぎた土地には、そのモデルとなった伝承の通りにおしなべて不吉な影が差す。ゲラルドは戦火の中、混迷を極める状況で蔓延する善悪でくくれない悲惨や悲劇と対峙していく。ここに伝承と現実の境界に立たされるかのような体験がある。

 ウィッチャー自体が境界線上にいるように、ファンタジーと現実の境目を旅する。ワイルドハントの伝承はオープンワールドという構成と合いまり、戦火の中にある世界の全土に蔓延する不吉や不条理をデザインした驚異的な世界となっている。

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2015年6月14日 (日)

「ゼノブレイドクロス」 感想&考察 惑星ミラはどこにもない 世界には意味が無い

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  そう惑星ミラはどこにもない。100時間前後を超える体験があろうとも、この世界に関して認識したり理解するようにはできていない。


 そこにはJRPGの進歩の名目の中、暗に睨んでいるだろう海外AAAタイトルのRPGであるとか、オンライン、そしてオープンワールドの要素などなどが絡み合った不気味で、しかし意味深いカオスが展開されている。

 とびっきりのリニアな進行で、言葉多くムービーを多用してシナリオを進行させていたモノリスソフトが完全にリニアを捨て去った転回。そこは革命的というよりも、何十時間触れていても世界観が浸透してこない恐るべきドライで、抽象的な体験が展開されていた…。

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2015年2月22日 (日)

AKB48とプロレスファンのための指輪物語「シャドウオブモルドール」

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 Talion, If you smell what Talion is cookin'!

 「シャドウオブモルドール」は表向きのフックには「ロードオブザリング」「ホビット」シリーズのミッシングリンクを埋めるストーリーが描かれていることで、裏側のフックとしては洒脱なAIを構築したことが大きな評価の一つになった「F.E.A.R」を開発したMonolith Productionsの新作であることで注目された。

 ライトな有名版権ゲームのイメージとハードなデベロッパーの作り上げた「バットマン・アーカムシティ」「アサシンクリード」のメカニックを利用したオープンワールド、ということで、多くのレビューもそういうところに落ち着いている。

 が、オレはというともはやオープンワールド文脈だの指輪物語だのどうでもいい。「一体、一体なぜこうなったんだこのゲーム」という思いを格闘技レビューもやってる身だと隠し切れない日本にいて嫌でも目にするあのアイドルグループを見ている身だと隠し切れない。そう本作のハイライトである「ネメシスシステム」これはどう考えてもあの影響を受けているとしか思えない。そうAKB48、そして大相撲、そしてプロレスである。今回のエントリはMonolith Productionsの中核に松井珠理奈を上位いや軍隊長にするためにCDを買い込んだ人間が潜んでいると推測する文章である。

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2015年1月19日 (月)

「三上真司はサバイバルホラーの父」それは嘘の可能性「サイコブレイク」

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 「まるで過去の記憶がまざりあっているみたいだ」そんなセリフ(ごめん、うろ覚え)を登場人物にしゃべらせているように、過去の三上真司のディレクションした「バイオハザード」シリーズの要素から、近年のTPSの流れに参入した「ヴァンキッシュ」のようなフォームまでを総括したゲームデザインとなっている。

 

 ところがそうした過去を総括したようなデザインであるがゆえに、一つの大きな疑問がゲームを進めていく中で湧き上がってくるのだった。それはシンプルに「三上真司ってサバイバルホラーの父、創始者とかゲームメディアは言ってるけどこれ本当かよ」という疑問だ。

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2014年11月21日 (金)

本当のホームズは空虚な闇だらけの現実を生きる 「Sherlock Holmes: Crimes & Punishments」レビュー

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 シャーロックホームズは古典的で、典型的で、もはや面白味なんて決まりきったはずの探偵のキャラとそこまで思い入れの無いオレなんかは思っていた。この世にはシャーロキアンと呼ばれる「ホームズの存在をいかに実在の人物のようにディテールを詰めて解釈できるか?」みたいなマニアックな楽しみ方をしてる人々がいるのはわかるが、基本そこまで掘り下げては知らない。(そういうのはやや古い話だが「磯野家の謎」みたいでそこまで好きじゃない)

 
 しかし現代はそんな古典的キャラクターの再解釈というのは常に常に進んでいるわけで、たとえばアメコミの世界などは古典的で典型化したはずのキャラ像を常に更新し続けている。スーパーマンやスパイダーマン、そしてバットマンなどはその当時当時のライターの作家性や映画監督の切り口によって新たな姿を見せているわけだ。

 そうホームズも近年ではドラマ「SHERLOCK」「エレメンタリー」といった(ほんとに舞台までも含め)現代解釈が進められ、そこでは典型的なそれじゃない。フィーチャーされるのはホームズの人間性や精神の欠陥であり、その裏打ちとしての強烈な推察能力というディテールだ。

 今回のSherlock Holmes: Crimes & Punishments」はそんなホームズというキャラクターの現代ならではの解釈が為された姿だ。そこにあるのは、すでに類型化されたどんな事件も解決してしまう探偵像というよりもホームズの現実への冷たい目線、実態の見えない感情といった人間性そのものの恐るべき空白だ。
 

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2014年10月 1日 (水)

METRO2033 小説とFPS 一本道の地下鉄 ”アルチョム”と”僕”

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 ”わかるか?死んでも、疲れ果てた魂が生まれ変わることはない。魂が安らげる場所はない。生前と同じ世界にとどまるしかないんだ。つまり、地下鉄の世界に。

 

 学問的な説明はできないが、私には、はっきりわかる。この世界では、人々の魂は地下の狭苦しいトンネルの中を舞い続ける。時の終わりまで。急ぐ必要はない。

 

 メトロには、現世と来世が共存している、ここはエデンの園であり、地獄でもある。私も、お前さんも死者の魂と共に生活している。死者の魂が、がっちりと輪になって、我々を取り囲んでいるのだ。列車にひかれた者、銃殺された者、絞殺された者、化け物に食われた者、焼け死んだ者……その他、ありとあらゆる非業の死を遂げた人々の魂だ。それらがどこに消えるのか、消えないなら存在を感じないのはなぜか、暗闇に光る重さの無い冷たい視線を感じないのはなぜなのか、私はずっと考えてきた”。

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2014年8月14日 (木)

Watch_dogs 1984-2014 30年の中で進歩した情報化・監視化・ビデオゲームの3つがクロスした大規模メディアアート

          4分の映像でまとめればこんな感じのゲームでした

  振り返ればここ2年は「Watch_Dogs」を延々と追ってきたわけで、言及した記事もワンタイトルの中ではかなりの数に上る。

「watch dogs」ウォッチドッグス中心で見るポストGTA・オープンワールドスタイル

E3 2013の感想と考察・「The Division」「Watch dogs」、「Destiny」「MGSV」が織りなすネクストレベルの未来光景

監視・規制・権力のビデオゲームズ 「ディシプリン*帝国の誕生」から「Watch dogs」まで6選

Watch Dogsファーストインプレッション エイデンとロールシャッハ

Watch dogs セカンドインプレッション 監視と管理が逆にオープンワールドに命を付加する皮肉

 ということで今回は長らく追いかけてきた「Watch_Dogs」レビュー完結編。

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2014年7月 4日 (金)

Watch dogs セカンドインプレッション 監視と管理が逆にオープンワールドに命を付加する皮肉

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キスをするカップルがいる 個人情報にアクセスする 男は脳に障害 女は臓器提供者 二人はどう出会ったのか

 「GTA」シリーズをはじめ大抵の都市型オープンワールドを遊んでいる場合、街中を歩く人々というのは街の空気感やリアリティを感じさせるためのエキストラ程度でしかない感覚はある。ひどく言ってしまえば、車でいくら轢こうがパトカーが追ってくるリスクを生む程度の存在。

 ベゼスダのRPGのようなタイプならば人物一人一人にほぼ話しかけることが出来、一抹の人格を錯覚することが出来るためエキストラ感は薄まる。でもGTA型ではゲームデザイン上なかなかそうしたアプローチは悩んでる感はある。「GTAV」では3人の主人公に加え地図に載らない、半ば突発的に出くわしたように始まる多数のサブイベントを配置することで「この街では一人一人にドラマがありそれぞれの人生を生きている」と次第に錯覚出来るようにしていたと思う。

 「Watch Dogs」は現代の社会リスク回避のための監視と管理を推し進めることへの欺瞞や恐怖みたいなものがそのテーマであるが、皮肉なものでこれまでの都市オープンワールドが無残にしがちであった街に住むひとりひとりに何らかの人生があり、ドラマを持っていてプレイヤーはその瞬間に出会っているという感覚を得られるようになっている……ということはじめゲームデザイン面のセカンドインプレッション。

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2014年7月 2日 (水)

Watch Dogsファーストインプレッション エイデンとロールシャッハ

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エイデン・ピアースが実質的に都市システムを手にしているという、ある種凶悪な全能感を得ることになった理由が、自分の姪を死なせてしまったことによる復讐のためだなんて誰が信じることが出来るだろうか?

 現代のGTA型都市オープンワールドを、監視・情報化社会によって再解釈した「Watch Dogs」。しかし実際に遊んでみると、当然ながら事前の印象と異なることは多い。

 監視と情報化は社会のリスクを軽減し、効率よい運営を目指すためのものだ。「Watch Dogs」のシカゴは2003年に現実に起きた北アメリカ大停電の原因でハッカーによるコンピューターウィルス説を採用し、脅威への対策として街全体を監視することはもちろん、個人情報を収集しインフラまで管理するシステムctOSを構築している。 主人公エイデンはctOSのシステムをハッキングすることで利用している。自身の目的を達成するためにctOSのシステムに介入しながら、そのうちにctOSの裏側に迫るようになる。

 ポイントはここだ。ドラマとして全体主義的な管理システム(悪)に抵抗するレジスタンス(善)という構図自体はオーソドックスである。だが実際に10数時間ほどゲームプレイを行った結果、管理とそのシステムを利用する主人公エイデンという構図に注目が行く。そこにはどこか善悪や正邪、モラルとインモラルの関係の揺らぎが深く、そこにはアメリカンコミックの名作「Watchmen」の主人公・ロールシャッハとスーパーヒーローの善悪と少々重なるのだ。ということでウォッチ繋がりという安易なファーストインプレッション。

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