3.ビデオゲーム表現

2015年10月20日 (火)

2015年の日本産オープンワールド・9つの奇妙なシンクロより生まれる狂気

Mgsv3

 今年鳴り物入りでリリースされ、賛否が分かれる内容となった日本産のオープンワールド「MGSV」「ゼノブレイドクロス」。両作は長い人気シリーズの初の試みということで注目が集まっていた。


 小島秀夫と高橋哲哉は、過去に同じ制作会社にいたとか、どこかで対談をしたりといったような目立った関係は無い。ゲームファンの間でも二人を並べて語ったりすることはまずないろう。だが長いキャリアの中大きくスタンスを変えただろう両者の新作は、奇妙なくらい内容がシンクロしている。


 ここからの書き散らしには両作の重大なネタバレが含まれている。なお「夏色ハイスクル★青春白書 ~転校初日のオレが幼馴染と再会したら報道部員にされていて激写少年の日々はスクープ大連発でイガイとモテモテなのに何故かマイメモリーはパンツ写真ばっかりという現実と向き合いながら考えるひと夏の島の学園生活と赤裸々な恋の行方。~」についてはいっさい言及していない。

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2015年10月 8日 (木)

虐殺器官のファントムペイン

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 「MGSV:TPP」メルヴィルの「白鯨」やオーウェルの「1984」といった小説が引用されているとのことだ。確かに語り手である”僕”イシュメールが伝説になる船長エイハブとピークォド号の乗組員たちに関わり伝記として残す関係を、プレイヤーがゲームプレイを通して関わりながら見つめるビッグボスとマザーベース、そして本作の結末まで含めて重ねることはできるかもしれない。

 だがしかし本当に大事な小説を忘れている。それは何十年も前だとか一世紀前の小説だとか、文学史に残るような昔のものじゃない。今からわずか8年前に刊行された小説だ。その小説と、そして作家はおそらく「MGSV:TPP」のドライで残酷な作風に決定的な影響を与えたと見ている。


 諸海外のトレンドであるオープンワールド化と、「half-life2」から「batman:Arkham knight」に至るイベントシーンでもゲームプレイは続くという演出を長回しカメラと解釈したムービー演出が本作をドライにし、かつてない無情さを与えている。そう「MGS:GZ」の時に思った。やはり本編でもムービーとゲームプレイを可能な限り切らない演出は健在だが、語られる世界と巨悪はこれまでのような主語のデカいものではなくなり、どこか抽象的な領域に足を踏み込んでいる。そこにかの小説の影響が考えられるのだ


 全ての所業がまるでマッチョなイルミナティみたいな過去シリーズの世界観からすれば、それはとても繊細なテーマだ。なぜそれを選んだのか?というのはその小説と作家の生涯に大きく関係あると思う。というのも、小島秀夫はその作家と少なくない交流があったようだから。

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2015年8月30日 (日)

暗殺者ヨハン再び 歴史や大局を遠く見つめるアサシンの視座

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 ふと「サガフロンティア2」を思い出していた。サガシリーズの中で物語に注力していた意味で異色なあれは、歴史というものを体感させようとしていた試みを取っていた。表側は戦記として世界のパラダイムを変える大きな歴史の流れをギュスターヴ13世サイドが描き、その裏側ではナイツ一族の3世代に渡る世界の裏側で暗躍するエッグと闘っていくというオーソドックスなファンタジーの二重奏という構成を取り、歴史というテーマへのアプローチを取っている。


 ところが突出して意味深いのは、異色の不能者として生まれやがて革命的に時代を変えるギュスターヴでも、15歳から86歳になってもなお杖で闘うウィル・ナイツでもない。作中わずかにしか登場しない暗殺者ヨハンである。


 皇帝が主人公となり歴史を描いていく「ロマンシングサガ2」と違い、ただでさえ「ファイブスター物語」のような年表が提示されている歴史のエピソードをドライブする構成になっているこの作品では、不思議なくらいギュスターヴとウィルを動かしていても、マスコンバットを行っても、そこに歴史や大局に決定的にインタラクションしている感覚が無い。まるでそのまま有り物の羅列を眺めているみたいだ・・・歴史や大局が描かれる物語には、傍観者であり関係者であるという立場が必要だ。それがサガフロンティア2における暗殺者ヨハンの意味深さに繋がる。

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2015年8月26日 (水)

Cyberpunk video game 2015

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 サイバーパンク。このジャンルのイメージは小説ウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」と映画「ブレードランナー」が見せた雨の降る闇夜の都市に明滅するネオンサインが定着させたと言われている。


 それは80年代から90年代初期にかけて、現実のテクノロジーが進歩してゆくのに歩みを合わせる形で映画から漫画、小説に至るまでそのビジョンは追及されていた。

 だが現実のテクノロジーが成熟していくにつれ、当初のビジョンは陳腐化してしまう。90年代を過ぎるころにはギブスンもブレードランナーのビジョンもその影を潜めていく。


 ところがニューロマンサー&ブレードランナーが当初見せたビジョンは、ビデオゲームでは一向に鎮まる気配が無い。それはAAAタイトルの「Deus EX」シリーズを挙げるまでもなく、それどころかバットマンシリーズの最新作「Arkham knight」でさえもそのビジョンを追従している。過去にない驚異的なアートスタイルで立ち上げられたのは、やむことのない雨の降るネオンサインが明滅する夜の都市。ブレードランナーのビジョンだ。それはクリストファー・ノーランの映画のバットマンが、映画でしか捉えきれない現実に寄ったドライな質感を追及したのと対照的な、Rockstadyのそれはまるでビデオゲームでしか捉えられない何かを追及した結果みたいだ。


 決してAAAタイトルだけじゃない。インディペンデント規模の作品でもここ2年来にリリースされた作品を見たってサイバーパンクのヴィジョンは留まる事を知らない。Super Giant gamesの「transistor」、ジェットセットラジオの影響のある「Hovor」、最近でもチェコのチームの作り上げた2Dプラットフォームでの「Deus Ex」を目指しただろう「Dex」などなど続々とリリースされてる。

 SF小説や映画の界隈では同一のテーマはよりソリッドになっているにもかかわらず、ビデオゲームではニューロマンサーとブレードランナーのビジョンは生産され続けている。「witcher3」で屈指のオープンワールドRPGを生み出したポーランドCD projekt REDの開発中の新作してもそうだ。往年のTRPGをベースにしたそのままのタイトル「Cyberpunk 2077」である。


 当初のSF小説も映画も、時代が進むにつれて近いテーマを扱う際にはそのビジョンから離れていった。にも関わらず、なぜビデオゲームはサイバーパンクの初期衝動のビジョン、闇に明滅するネオンそして降り続ける雨を幾度も繰り返しているのだろうか?

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2015年7月 9日 (木)

カメラ  そしてあなたの目

 ビデオゲームが映画に近づくとかなんとかって話は今どれだけ掘り下げられているのか?なんて、意味ありげな一文を書きながらどうでもいい話になる。「witcher3」をやりながらボンヤリ思ったことの書き散らしだ。

 「ゼノブレイドクロス」「Batman: Arkham knight 」それから「MGSV」「Fallout4」と2015年オープンワールド世界大戦とペイン頭痛を起こしそうな比喩を使うほかないくらい、精微なグラフィックの広大な世界を提示するAAAタイトルが登場している。

 その中で「witcher3」はまるで、18世紀から19世紀のヨーロッパの油彩画の如き質感のグラフィックを持っている。陰鬱な作品世界にふさわしいそれだ。起動するたびに感激する。だが、ただひとつその感激が冷める瞬間がある。それは本当にささやかなことなのだが…

 雨が降る。すると画面に水滴が残る。ただこれだけのことだ。もしかしたら当たり前のことで、本当に大したことのない話かもしれない。しかしオレには当たり前のことではなく、それどころか長らく続く映画とゲームが近づくことの歪なそれを強く感じてしまう。これは「witcher3」だけで思ったわけではなく、もっと古くPS2の「メタルギアソリッド2」から、「GTA:VICE CITY」からずっと感じていることだ。その違和感とはなにかというと…


 

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2015年5月 5日 (火)

インタラクティブ・アニメーション アニメーション作家によるビデオゲーム

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 日本ではアニメとゲーム≒クールジャパンだオタクカルチャーだって一括りになりがちだけど、突き詰めたところではその表現の幅を広げるなかで案外関係するものかもしれない。たとえばアート・インディペンデントアニメーション界隈の一部ではアニメをただ観賞させるものというだけではなく、観客が参加し干渉するインタラクティブな方法で作られた作品も現れている。それはアートアニメーションの本場のサイトで公開されていると言うだけではなく、iosやsteamでも普通に販売されている。

  ということでアニメ嫌がらせ書き殴りの「17.5歳のセックスか戦争を知ったガキのモード」 との連結ねた企画・ここの所見かけるビデオゲーム界隈とアニメーションの、インタラクティブを通した関係について。

 なお、本エントリはリンク先にweb上で起動する作品が多く、今回はPCでGoogle chromeを利用して読み散らかしていただけるとスムーズに各作品のリンク先に行けます。

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2015年3月 5日 (木)

half-life MOD 「ESCAPE FROM WOOMERA」 未完のドキュメンタリーゲーム(修正)

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 前回の「ドキュメンタリーの要素のあるゲーム」ネタの続き。 現実の事件や社会を題材にするゲームが増えている中でドキュメンタリーのような手触りの作品が少なくなく出ている印象がある。しかし歴史の中では、社会問題にアプローチしたマジもんの危うい作品があったようだ。

 初代・2と共にhalf-lifeのMOD界隈は現在にまで繋がる競技性の高いFPSから特異なアドベンチャーを生む土壌になった。ラディカルであったり実験的な手法をMODからスタートし、あとにスタンドアロン版としてリリースされてきた作品は数多い。


 そんな特異さが当たり前な土壌の中で異色の経歴を持ったMODがある。それはオーストラリアの移民問題という凄まじく突っ込んだアプローチをとり、特異な注目を浴びていた。だがその野心にもかかわらず、危険なテーマがさまざまな批判を受ける中で制作は中断。完成品がリリースされることなく、現在までもhalf-life MODという形でのプロトタイプ版のみが残されている。それが2003年から2004年に行われたプロジェクト「ESCAPE FROM WOOMERA」だ。

 

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2015年2月27日 (金)

ドキュメンタリーの要素混ざりのゲーム爆殺編

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”ドキュメンタリーゲーム”というジャンルの話じゃない 

作品に内包される”ドキュメンタリーの要素や可能性”までの話

 ビデオゲームがかなりのレベルでの現実の現象をも再現し、現実の都市も世界も再現しようとしたり、その他にも複雑なテーマの提示などなどを経て最近観られるのは、一種のドキュメンタリーの要素が混ざる作品だ。映画などとの関連を嫌でもつけられるビデオゲームではあるが、このメディアならではのドキュメンタリーの要素ってのはどうなんでしょうかの雑文。

 タイトルの爆殺はとくに意味はない。そしてビデオゲームドキュメンタリーみたいな新ジャンルの話でもない。あくまで最近のゲームデザインに含まれるドキュメンタリー”要素”までの書き散らし。

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2015年2月18日 (水)

現実はなげやり・2000年代中盤あたりのFPSで目立ってたのをいまごろ見つつ

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 ながらく家庭用機専門だったがここ数年、大変遅れながらクラシックのPCゲームをフォローし始めてる。なかでもやっぱり「Half-life」」シリーズや「Far cry」「postal2」そして「S.T.A.L.K.A.R shadow of Chernobyl」あたりがよい。


 何が良いって、余計なムービーやらの演出が少なく、自由にしてある…ってことでなくそれ以上に琴線にかかるのは、リアリティのレベルというのがかなり現実に近くしてある。ある意味でそれは最近のディテールの細かくなった描写のなかで失われた感覚というか。「GTAⅢ」「GTAV」のあいだにあるグラフィックスやAI以上の違いというか。

 それは一見不親切であり投げやり。現実は常に不確定で味気ない。だが生々しい瞬間や時間というものがある。

 

 

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2015年2月 2日 (月)

高い塔の彼方 灯台の光

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 ビデオゲームを粗雑に遊んでいると、ジャンルに関わらず頻繁に登場するモチーフがある。そのモチーフはとても象徴的で、こうも頻繁に登場するのにはただの偶然ではなく、もしかしたらゲームメカニクスやデザインの上での理由があってのものかもしれない。

 そうそれは塔そして灯台だ。ビデオゲームを遊んでいれば気が付けばプレイヤーは地平線の向こうにある塔を見上げること、塔をかけあがることも少なくないだろう。プレイヤーの目の前に現れる塔は見方によってはまるでゲームマスター、あるいは作品世界のシステムや制度の象徴みたいだ。

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