GAME・SCOPE・SIZE 2015年のベストビデオゲーム
GAME・SCOPE・SIZEの2015年のベスト、並びに書き散らしたエントリまとめです。タイトルクリックで書き散らしに飛べます。
画像は主人公が「half-life」のゴードン・フリーマンのような姿になっている「FALLOUT4」です。ハウジングで鋼鉄の九龍城塞を作り続けており全く進んでいないため、本作はとても評価できないのでした。
90年代の初頭から中期くらいの3DCGグラフィックスリバイバルって、今ならバイオハザードやサイレントヒルのグラフィックスを意識した「back in 1995」あたりがわかりやすい。けれど、なかなか出ないように思うのは「クーロンズゲート」や「GADGET」のような、まだ3DCGでどんな世界が作れるのか試行錯誤していたころの、当時ならではのレトロ・フューチャーの意匠でプリレンダを繋げて無理やり空間を感じさせるような質感の作品だ。
それがまったく予測しないところから出てきた。しかも、ジャズ&エレクトロニカのバンドメンバーから。
itch.ioを他にも眺めてみると、「ゲーム進行のあるポイントに辿り付くとプリレンダムービーが流れる」みたいな90年代ゲームみたいな演出を意識した作品が他にもある。けっこう同じこと思ってる人は多いのかもね。
メトロイドヴァニアムーブメント
「Axiom varge」「Enviroment station α」「オリとくらやみの森」「Apothen」など
今年はオープンワールドの傑作が立て続けにリリースされる一方で、特筆すべきはメトロイドヴァニアにて多様なスタイルの作品が多くリリースされたことだ。
元AAAタイトルスタッフのものから個人が数年かけた作品から、ピクセルスタイルから壁画スタイルまで凝ったアートスタイルのものまで多様であり、同時期に集中して発売された。おまけにEpic gamesから「Shadow Complex」のリマスター版が発表され、PC版は一定期間中にフリーでダウンロード出来るなんてニュースさえあったのだった。詳しい話は来年にやります・・・
walking simulatorは元AAAタイトルに関わってきたスタッフによる作品がだんだん出てきている。美麗で写実的なグラフィックでプレイヤーに自由度を与えつつ、メインストーリーを捉えられるように巧みに誘導するレベルデザインを施している、完成度の高い作品だ。
とはいえこのジャンルならではの個人や少数製作による、独特なビジュアルでレベルデザインが荒くとも自己表現に近い形のものも恒常的に生まれている。
しかし「The stanlay plable」の作り手はそのどちらにも属さない。むしろ巧みに作ることすらもネタのひとつでしかないし、自己表現とかいって行き詰るそれも含めてこのジャンルそのものすら俯瞰した立場にある。その点が素晴らしい。
同じく「The stanlay plable」に関わっていた作者のひとりによるフリーで公開された「Dr. Langeskov, The Tiger, and The Terribly Cursed Emerald: A Whirlwind Heist」もやっぱりそういうスタンスなのでよかったのでした。
今年のwalking simulatorベスト3つ目。tale of tales(今のところ)最終作は、戦争が起き刻一刻と変貌する日常を描く。これまでのような難解な隠喩でメインシナリオは描かれておらず、かなり具体的に描いている。そのあたりがメジャーを意識したように思う。
「this war of mine」と別に、パートタイマーの一市民から見た戦争の日常が主だ。わかりやすくドラマチックな演出こそないのだが、日常が徐々に戦火に包まれていく気配は随一だ。
あと、tale of talesの主要メンバーであるAuriea Harveyの背景ともすこし重なる。主人公アンジェラをアフリカンアメリカ人に設定し、70年代と、 しかしベストに挙げるの3つもwalking simulatorはやりすぎですね。
ふつうに遊んでいたら嫌でも今年の最高傑作になるのではないでしょうか。オープンワールドムーブメントの中でも、ワイルドハントという伝承がヨーロッパに存在しているのに重なる形で、世界の全土に振りまかれる不吉さや残酷さに対峙していくゲームプレイとシナリオが魅力的。これがダメだとしたら、「UIがひどいから」「こうしたRPGのメカニクスの慣習がないから」ということなんだと思う。
メインシナリオは決まりきってるけれどプレイヤーの解釈や判断がダイレクトに反映されるというのは、オレはFF(など日本のAAA)がこうなったらいいなあと思ってた。まあbiowareの「mass effect」のころから思ってたことだけど…
「MGSV」は露悪的な見方をしてしまえば、現実と並行して小島秀夫の進退とコナミ、そしてそれらを観測してるファンそれぞれの関係が反映しているかのようなのが凄まじかった。小島秀夫とマザーベースの関係などなどをそのままビッグボスのようだね、いや追放されたヒューイだよなどと少なくないファンが見立てていたと思う。
「MGSV」はカオスだ。表向きの世界のAAAタイトル伊藤計劃への返答みたいな部分、いま考えたらクラフト&サバイバルジャンルの流行るPCゲーマーの流れに対して仕掛けたのではとさえ思うFOBと核武装ネタなどなどに加え、現実とのシンクロさえ起きていた。
シンプルにオープンワールドに深みを与える意匠を見た場合でも、「FALLOUT4」も加えて徐々にシミュレーションの要素も含めたタイプのものが増えてきている印象はある。
話ずれちゃうけど「FALLOUT4」が大きく導入したシミュレーションの要素ってのは「minecraft」から「DayZ」「Rust」から「H1Z1」などクラフト&サバイバルジャンルの影響がある気がしてるが気のせいかな?この話の続きは来年にします…
ということでGAME・SCOPE・SIZEの2015年の瞬間最大風速を感じられたベストは「MGSV:The Phantom pain」です。普通に評価すれば「Witcher3」がベストで当たり前だし、作品外部の制作者事情まで込みにするのは違うよと言われればそうでしょう。時間が「MGSV」を正しい位置に追いやるでしょう。しかし自分は作品世界を超えた混沌としたとこに魅力を感じておりました。よいお年を。
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確かにback in 1995みたいな3DCG初期を意識した様な作品ってあまりインディーズからは出て来てない様な気がするね。だからこそ割と多くの人が注目してるのかなぁ。
あと個人的にはRPGであるメインシナリオでのダイアログチョイスや行動の選択みたいなのはあまり好きじゃないな。
周回しなくてはならないという強迫観念が常に自己に問われてあまり集中出来ない性質なんだよね(笑)。
脇道であるサイドクエストとかなら歓迎なんだけど。
でも最近のRPGのメインシナリオは大筋の流れ自体は一本的に作られてるので、そこまで気にする必要も無い気も。
投稿: ドライカレー | 2016年1月 1日 (金) 19時16分
ドライカレーさん
いや、インディーゲームで3DCG初期的なローポリゴンぽさを追ってる作品は
少なくはないです。
OFF-PEAKはレトロフューチャー感も込みでってのでなかなか無かったので…
行動の選択っての、プレイヤーにとって分かれますね。
あれを「自分がこの事態に対して下した結果」と取るか、
「いくつもある章の一つ。選ばなかった選択肢は読んでいない章である。」ととらえるかみたいな。
ぼくは前者で捉えているし、
biowareやCD PROJEKTもそういう風にデザインしてると思います。
話ずれるけど日本では行動の選択どう捉えられてるんですかね?
日本のさらに一部になっちゃうけど、
ノベルゲームであんなにループネタが流行るのも、
逆をとればノベルでの選択は「プレイヤーが事態に対して下した結果」じゃなくて
「いくつもある物語の章の選択」って感覚で、
選ばなかった選択肢は後で必ず選ばれることを前提にデザインしてると言うか。
投稿: EAbase887 | 2016年1月 1日 (金) 20時29分