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2015年10月27日 (火)

「Downwell」レビュー SpelunkyとNuclear Throneがスマホにて交錯した感じ

 

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 「Downwell」。大変な話題作となっておりますね。そのバズりようを「NASがillmaticをリリースしたときみたいだね」と例えるのをみたこと無いくらいにはゲームファンとヒップホップの距離を感じさせるのだが、そんなことはどうでもいい。

 さて本作は「ローグライクアクション」(ステージやアイテム、敵配置が自動生成のアクション)のジャンルである。このジャンルはここ何年かの間に数々の名作がリリースされてきたし、「Downwell」はその中でもひときわ発売前より注目された。このゲームがどう面白かったのか?って書き散らしです。



 

 近年はUnityやUE4などなど著名なゲームエンジンが無料化されて展開、もっと専門的に開発したい場合はプロフェッショナル版を有料でアップデート出来るという形で広まっている。「Game Maker Studio」はその中でもプログラミングの技術が少なくとも、2Dのアクションゲームを作りやすいゲームエンジンとして広まっている。あの「Hotline miami」シリーズもこのエンジンで作られている。「Downwell」はゲームエンジン「Game Maker Studio」 で制作されている。



 こうして使いやすくなったゲームエンジンを採用し、学生が傑作を製作した、フェスティバルで賞にノミネートされたというケースはセンセーショナルだが、広い視点で観れば決して珍しいケースでもないとも思う。 (当然、本作のバズりはそれだけではなく、数々のインタビューから察せられる作者のもっぴんさんのゲーム制作におけるリテラシーの高さと、メディアにて話題となる多数の好循環も関係している)


 「Downwell」は実際に制作するときも、同じエンジンで作られている先行作品の構成を大きく参考にしていたのではないだろうか?


 このあたりことを掘り下げたものを読みたいんだけど、今のところ、全然文脈関係ないはずのマリオを超えただの、いろんな意味で見当違いの意見が目立ったり、アイドルマスターの春香さんアイコンを使うクズみたいなニュースサイトが日本人は無料が好きだとかどうたらという意見だけ曲解して切り取るような悲惨極まりない話題が目立つ。


 神輿に乗せるにしてももう少しましな方向へ持って行ってもらう意味で、そろそろ先行のローグライクアクションと制作に関してのインタビューをオレ個人は待ちたいところだ。…まあそんなことはいい。


 「Downwell」のデザインはいったいどこから来ているのか?というのはマリオでもロックマンでも縦シューティングでもなく、一番大きいのは同Game Maker製のローグライクアクションからではないだろうか。実際に作者もっぴんさんのTwitterや製作ブログなどを見ると、モデルにしているだろう作品の言及がいくつか残されている。たくさん影響をうけた作品はあると思うけど、2作に絞るとこれらが大きいのでは。

始原のSpelunky クラシック版

 2009年のフリー版リリースから2012年にて買い切り版にブラッシュアップした、もはやローグライクアクションのクラシックの地位を揺るぎなくしているDerek yuの代表作。初代のフリーで公開されてるクラシック版がGame Makerにて制作されている。


 ローグライクアクションというジャンルの面白さを知るならこれを遊べば間違いない。知らなかった人も遊んでなかった人もすぐやった方がいい。「downwell」が面白かった人ならまずハマれると思う。ゲームのテンポ的に「不思議のダンジョン」みたいなターンベースのローグライクになじみのある人でもある程度すんなり入れると思う。

 

 名前通りまじで「スペランカー」を元ネタにしたゲームで、4つのエリアの奥深くにある財宝を目指す。ステージのスタートは上から下のゴールに向かって降りていく形で構成されており、道中に膨大な罠や敵が配置される。


 ライフ制であり、最初から爆弾とロープを所持している。床を爆弾で破壊してルートを作ったり、道中で宝石や金塊を集めることでショップでアイテムを買って進むことが出来る。または店主を殺して全部奪ったりなんてのも自由だ。


 鼻っから厳しく、基本的な立ち回りを知らないと壁から放たれる矢も避けられずに死ぬ。トゲの床だってどれだけライフがあっても刺されば一撃で死ぬみたいなキツいバランスなんだが、慣れれば素早く下の階層に進めるようになる。


 基本的なデザインからピクセルアート、アクション時の挙動なんかも含めて「Downwell」がモデルとしている要素は数多い。



 実際、「Downwell」の開発途中(ガンブーツ発想前くらい?)の画面を見ると、「下に通り過ぎた瞬間に放たれる矢」や「膨大なとげの床」といったデザインの跡がある。これは「Spelunky」の最初のステージで初心者プレイヤーを殺しにかかる仕掛けの影響だと思われ、このほかいくつもモデルにしている部分は散見される。


 「Spelunky」のクラシック版はソースコードも公開されており、gamemakerで制作する際に様々なメカニックを作るときのの参考にしたひとつではないか?と思うんだけど、このあたりはどうなのかはわからない。この辺はだれかインタビューしてみてください。


 ということで「Spelunky」クラシック版はこちらから


銃撃のNuclear Throne

 オランダのユトレヒト芸術大学のデザイン科を辞めて立ち上げたというデベロッパー・Vlambeer。これまで「Super Crate Box」「Serious Sam」のスピンオフ、そして「Luftrausers」を制作してきた実績を持つ。


 現在の新作「Nuclear Throne」は360シューターのローグライクアクションだ。キャラごとに異なる能力を持ち、ステージ上の敵を全て殲滅することで次の階層に進むことができる。


 銃撃戦はシビアであり、最初からキツめの弾幕が来る。ハックアンドスラッシュみたいなテンポで行くとすぐにやられる。慎重なカバーリングは必至だし、無駄に弾数をばら撒くことも危険だ。だけど弾が無くなってカツカツになることは多くは無く、別の武器やほどほどの弾丸のドロップで賄える…というガンファイトの気持ちよさとバランスはシューターのゲームデザインに近い。


 2Dトップダウン型のローグライクアクションの構成にシューターのバランスを組み込んだことで、ローグライクアクション特有のリソース管理のもどかしさを残したままガンファイトの気持ちよさや面白さを残しているのがいい。

 「Downwell」はガンブーツのデザインに「Nuclear Throne」型の銃撃の気持ちよさと、滞空するための弾数のリソース管理、そしてUIも含め、ステージクリアごとのアップデートや、様々な能力の差があるスタイルなどなどの選択肢の部分に影響が見られると思う。

そしてDownwellの「コンボ」とカジュアルさ



 こうして振り返ると4つのステージとボスという構成、銃器の選択、ステージクリアごとに追加されるアップグレードの選択で戦略を立てていくことなどなど、特に「Spelunky」のジャンプアクション型ローグライクの構成やレベルデザイン、ショットアクション「Nuclear Throne」の手触りやUIの影響が大きいのではないか。


 先に上げた2つを見ても、ローグライクアクションは引き札の取捨選択の時間と、プレイヤーのアクションの腕を問う瞬間という、ターンベースにはないゲームプレイの緩急がとくに大きい。「Downwell」は以上の2作をさらにソリッドにした印象がある。ハイスパートなアクションだけど、横穴入って武器変えたりショップ行ったりすると、ゲーム中の時が止まる。ところどころ考える間を入れているあたりの緩急にこのジャンルならではな感じある。


 しかしソリッドな出来になっているのは、このゲームがいい意味でのカジュアルな感じが起因してる気がしている。スマートフォンを主なプラットフォームとしてることも関係あるだろうか。わずか3ボタンの操作体系、赤白黒のみのカラーリング、縦画面を井戸下りって発想したことなどなど、情報量の絞りぶりなんかもそれっぽいと言えばそれっぽい。


 


 オレはスマートフォン版で本作を遊んでいるのだけど、特にカジュアルな良さ、と感じたのはゲームデザインのコアなところにコンボがあることだ。シンプルだが敵を踏みつけたり銃撃で倒したりを10連20連とできるようになるとジェムや弾数、そしてライフが増えるし、習得することで足場の無い後半のステージに対応しやすくなる。


 それ以上に他のローグライクアクションでは意外にない圧倒的なテンポの良さが見える。だからコンボは間違いなくこのゲームの本質にあると思う。でもこれは、意外にスマホのシンプルなゲームの快楽にも近かったりする。

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 スマホのカジュアルなゲームは操作や表現の選択肢を絞るからこそ、いかにシンプルに快楽を伝えるデザインできるかを追及されていると思う。


 核のシンプルな快感は、同じくスマートフォンで展開された障害物避けを何コンボ続けられるか?ということだけで成立してる「fleppy bard」「Super Hexagon」のカジュアルさを思い出したりした。


 ステージの自動生成のふり幅も意地悪なもの、コンボのテンポを殺すものでないことも大きい。基本的に落下してコンボを繋ぐテンポを崩さないことに注力していて、既存ローグライクアクションでしばしば見かけるような、ステージ途中にランダムでキツい中ボスが出るとか、真っ暗闇で視界が制限されるといったようなテンポを崩す仕掛けを入れない。こうしたテンポ重視のステージ自動生成ってことではローグライクというか、「temple run」みたいなラン系ゲームのデザインも思い出す。

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 リトライを誘導する仕掛けも大きい。一定量の獲得ジェム数によって色を変えられるパレットやスタイルがアンロックされるなど、RPGでよくある経験値稼ぎやアイテム集めみたいな「蓄積と収集」の要素も絡めてあることでついつい遊んじゃうようになってる。この辺も少なくないスマートフォンのヒットタイトルが絡めている仕掛けの一つではないか。


 コンボに注力したデザインとやジェム集めなどなどの点によって、やはり初見の難易度が高く、ある種の敷居が高さが免れないローグライクアクションのなかでカジュアルな印象を与えたことが大きい。スマホゲームの影響はあるのか、また影響があったとしてどの作品の影響なのかってのは気になるけれど。(まあたぶん、スマホプラットフォームでゲームの一番気持ちいいとこ掘り下げた結果、既存スマホゲームみたいにオレが感じたんだと思う。)

 
 「Downwell」は既存ローグライクアクションのハードコアな部分を研究して吸収していることと、スマホゲーム的なカジュアルさの両者を合わせ持つことで、結果スタイリッシュなデザインになってることが面白い。



よく考えたら日本でローグライクアクションをここまで表だってやったケースはまずないのかもね


 最後にしょうもない話で締めよう。


 日本国内の感想やらざっと眺めると、本作を評価する時に比較されるタイトルで「Spelunkey」がそんなに出てこない。ジャンプして弾を撃つからマリオやロックマンだとか、縦画面で弾を撃つから縦シューティングだとか出てるの見かけたくらいで、もっとも納得できたのがなんとニコニコ大百科の紹介文くらいっていう…


 やっぱり日本ではターンベースのローグライクはなじみがあっても、思った以上にローグライクアクションというのは広まっていないのかも。日本人用に「ローグ」をアレンジした「不思議のダンジョン」みたいのが今までにないから、こういうことになるのかも。



 日本ではセンセーショナルな話題とともに、たぶんトルネコの不思議のダンジョン以来にはローグライク認知の平均水準を変える効果はあるんじゃない・日本のインディー市場やフリーで発表してる個人製作の方々にも変化あるのでは。これまでもターンベースのローグライクは多く作られたし「elona」って傑作も出てるが、ローグライクアクション作ってるひとははいるのかもしれないけどそこまで知らない。でもそれを作る人はもう少し増えるんじゃないのってことで締めとさせていただきたい。

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