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2015年8月30日 (日)

暗殺者ヨハン再び 歴史や大局を遠く見つめるアサシンの視座

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 ふと「サガフロンティア2」を思い出していた。サガシリーズの中で物語に注力していた意味で異色なあれは、歴史というものを体感させようとしていた試みを取っていた。表側は戦記として世界のパラダイムを変える大きな歴史の流れをギュスターヴ13世サイドが描き、その裏側ではナイツ一族の3世代に渡る世界の裏側で暗躍するエッグと闘っていくというオーソドックスなファンタジーの二重奏という構成を取り、歴史というテーマへのアプローチを取っている。


 ところが突出して意味深いのは、異色の不能者として生まれやがて革命的に時代を変えるギュスターヴでも、15歳から86歳になってもなお杖で闘うウィル・ナイツでもない。作中わずかにしか登場しない暗殺者ヨハンである。


 皇帝が主人公となり歴史を描いていく「ロマンシングサガ2」と違い、ただでさえ「ファイブスター物語」のような年表が提示されている歴史のエピソードをドライブする構成になっているこの作品では、不思議なくらいギュスターヴとウィルを動かしていても、マスコンバットを行っても、そこに歴史や大局に決定的にインタラクションしている感覚が無い。まるでそのまま有り物の羅列を眺めているみたいだ・・・歴史や大局が描かれる物語には、傍観者であり関係者であるという立場が必要だ。それがサガフロンティア2における暗殺者ヨハンの意味深さに繋がる。

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 歴史や時代の大局はモチーフとしていつも重要な位置にある。しかし巨大な概念、膨大な要因が絡むため、実態をつかみきれないものだ。

 そこにインタラクションするのはどうやら時の首相だとか大統領やらを便宜的に主人公にしたシミュレーションゲームという形も座りがいいのだが、傍観者でありながら同時に事態に関わっている立場であるほうがいい。そうゲームのプレイヤーというのは自らは能動的にかかわっていると錯覚していながら、本質的にはデザインされた舞台や一つの物語に対し受動的であり俯瞰する立場である。「恐縮だが」と言われれば意識的に動いていると思いながらすでに設定されたある物語の流れに乗らざるを得ないそんな立場だ。


 物語主導のビデオゲーム(に、限らないが)にて能動的であり受動的なプレイヤーが歴史や大局に関わる立場に近いロール、そこで殺し屋や探偵、もしかしたら刑事みたいなキャラクターが主人公として選ばれる。

 少なくとも「サガフロンティア2」のわずか2つのエピソードにしか現れない暗殺者ヨハンがオレにとって強く印象付けるのは、半ばシミュレーション的な構成であったロマサガ2と違い明らかにストーリーにドライブする形の構成であるために、表と裏の歴史を繋げる意味で本当に必要だった役割や視座を示唆していることだ。



 サガフロンティア2中ヨハンのエピソードは完全に歴史からも大局からも切り離され、それどころか「サガフロンティア2」という作品全体からも分裂してすらいる、特異なエピソードである。「紅いサソリ」というダサすぎる暗殺組織に所属しているヨハンの、組織を裏切り追っ手から逃げながら暗殺術のモノローグが語られるそれは鉄の時代ギュスターヴを中心とするサンダイルの架空戦記の歴史とも、影で暗躍するエッグを追うウィル一族の歴史のエピソードとも本質的に関連せず独立している。ギュスターヴに拾われるも組織から埋め込まれた毒に抵抗することも出来ず死ぬ、ひどく孤立したキャラクターだ。



 殺し屋であるとか探偵であるとか、そこには単純に依頼を受けた人物の命を奪うという目的のみならずその依頼者からターゲットに至るまでの背景が関わってくる。そこで初めて歴史や時代の大局といったに触れる。 サガフロ2のヨハンのエピソードが奇妙に印象深いのは、全く主軸を失っている本作の中で初めて歴史の関係者でありながら傍観者である立場を得られたことが大きい。


 実際に「killer7」「ヒットマン」、「アサシンクリード」シリーズなどなどを思い返すに優れた暗殺者(や、探偵とか刑事とか…)の視座の作品は、どうあれ大局には深くかかわりはしないが確実に流れがどこへ向かうかを左右させながら、歴史の大局を見つめていく。そうした中で自身の立ち位置がどうなのかを知っていき、最終的には主人公本人の問題に帰結していく、みたいな国家とか歴史みたいな主語がどでかいところと個人の関わりがクローズアップされる。そしてその立場がビデオゲームとプレイヤーの立ち位置にも重なるからよいよねと思うのだった。

 ところで「サガフロンティア2」で表側のヨーロッパの波乱の戦国時代の歴史の裏側で通常のファンタジーRPGみたいな長い闘いがありましたという構成の最大の完成系はおそらく「witcher」シリーズだろう。あれが多分表側の様々な国が覇権を争う歴史を作っている一方で、ワイルドハントをはじめとした超常のものと闘う裏の歴史を体感できるデザインになっているのだ…ということでサガフロ2ファンはウィッチャーやってみてください。そしてウィッチャーファンがサガフロ2遊ぶとリヴィアのゲラルドのいない世界はこんな感じなのかよと思うでしょう。何の話だっけ?最近は書きながらすべてを忘れていくんだ…あっそうだ、次回はいよいよ「witcher3 wild hunt」の書き散らしにしようという話だった。また次回!

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