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2015年8月

2015年8月30日 (日)

暗殺者ヨハン再び 歴史や大局を遠く見つめるアサシンの視座

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 ふと「サガフロンティア2」を思い出していた。サガシリーズの中で物語に注力していた意味で異色なあれは、歴史というものを体感させようとしていた試みを取っていた。表側は戦記として世界のパラダイムを変える大きな歴史の流れをギュスターヴ13世サイドが描き、その裏側ではナイツ一族の3世代に渡る世界の裏側で暗躍するエッグと闘っていくというオーソドックスなファンタジーの二重奏という構成を取り、歴史というテーマへのアプローチを取っている。


 ところが突出して意味深いのは、異色の不能者として生まれやがて革命的に時代を変えるギュスターヴでも、15歳から86歳になってもなお杖で闘うウィル・ナイツでもない。作中わずかにしか登場しない暗殺者ヨハンである。


 皇帝が主人公となり歴史を描いていく「ロマンシングサガ2」と違い、ただでさえ「ファイブスター物語」のような年表が提示されている歴史のエピソードをドライブする構成になっているこの作品では、不思議なくらいギュスターヴとウィルを動かしていても、マスコンバットを行っても、そこに歴史や大局に決定的にインタラクションしている感覚が無い。まるでそのまま有り物の羅列を眺めているみたいだ・・・歴史や大局が描かれる物語には、傍観者であり関係者であるという立場が必要だ。それがサガフロンティア2における暗殺者ヨハンの意味深さに繋がる。

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2015年8月26日 (水)

Cyberpunk video game 2015

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 サイバーパンク。このジャンルのイメージは小説ウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」と映画「ブレードランナー」が見せた雨の降る闇夜の都市に明滅するネオンサインが定着させたと言われている。


 それは80年代から90年代初期にかけて、現実のテクノロジーが進歩してゆくのに歩みを合わせる形で映画から漫画、小説に至るまでそのビジョンは追及されていた。

 だが現実のテクノロジーが成熟していくにつれ、当初のビジョンは陳腐化してしまう。90年代を過ぎるころにはギブスンもブレードランナーのビジョンもその影を潜めていく。


 ところがニューロマンサー&ブレードランナーが当初見せたビジョンは、ビデオゲームでは一向に鎮まる気配が無い。それはAAAタイトルの「Deus EX」シリーズを挙げるまでもなく、それどころかバットマンシリーズの最新作「Arkham knight」でさえもそのビジョンを追従している。過去にない驚異的なアートスタイルで立ち上げられたのは、やむことのない雨の降るネオンサインが明滅する夜の都市。ブレードランナーのビジョンだ。それはクリストファー・ノーランの映画のバットマンが、映画でしか捉えきれない現実に寄ったドライな質感を追及したのと対照的な、Rockstadyのそれはまるでビデオゲームでしか捉えられない何かを追及した結果みたいだ。


 決してAAAタイトルだけじゃない。インディペンデント規模の作品でもここ2年来にリリースされた作品を見たってサイバーパンクのヴィジョンは留まる事を知らない。Super Giant gamesの「transistor」、ジェットセットラジオの影響のある「Hovor」、最近でもチェコのチームの作り上げた2Dプラットフォームでの「Deus Ex」を目指しただろう「Dex」などなど続々とリリースされてる。

 SF小説や映画の界隈では同一のテーマはよりソリッドになっているにもかかわらず、ビデオゲームではニューロマンサーとブレードランナーのビジョンは生産され続けている。「witcher3」で屈指のオープンワールドRPGを生み出したポーランドCD projekt REDの開発中の新作してもそうだ。往年のTRPGをベースにしたそのままのタイトル「Cyberpunk 2077」である。


 当初のSF小説も映画も、時代が進むにつれて近いテーマを扱う際にはそのビジョンから離れていった。にも関わらず、なぜビデオゲームはサイバーパンクの初期衝動のビジョン、闇に明滅するネオンそして降り続ける雨を幾度も繰り返しているのだろうか?

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2015年8月10日 (月)

南米の聖剣伝説「Toren」の啓示

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 上田文人の「ICO」が見せたゲームデザインは未だ影響を与え続けている。一切のユーザーインターフェースを取り除くことでプレイヤーからルールや競技性の観点を省き、エモーショナルな体験に注力することだ。それは「ブラザーズ:二人の息子の物語」などなどに影響の後は見られる。

 ブラジルの開発会社swordtalesのデビュー作である「toren」もまたそうしたデザインを引き継ぐ形の作品である。だが先に書いてしまうとキャラクターのモーションやアニメーションの質は決して高くはない。それは「ICO」スタイルの生命線でもあるゆえに、完成度に影を差す。

 では後発の失敗作なのか?というとそうではない。「toren」が与える独自の印象とはエモーショナルなそれではない。イニシエーションと啓示に溢れた、感情を沸き立たせるような…とは違う異質な余韻を残す。それは南米に渡った「聖剣伝説」みたいで、主人公の少女は剣を取り成長する大樹を伝って塔を登っていく。

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