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2013年12月29日 (日)

「GTAV」感想と考察 もしあなたの友達が陰鬱な中年とばかりつるむようになればしかるべきところへ相談に行け

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このゲームではライフインベーダーこと"Facebook"を「人類をどうしようもない状況へ追いやった根源」と嗤い、やはり継続し続けるアメリカの共和党系列も新自由主義ムードも嗤うが、ロックスターゲームスも大概だ

 「GTA3」が出てきたときは、限りなく現実を模した都市の中でただ車を盗み、人を殺し続け、警察とそして軍隊と戦い続けるインモラルな自由と暴力を振り回すことが出来ればそれでよかった。だがそれもシリーズを重ねるごとに飽きる。しかし「GTA・サンアンドレアス」では綿密に練られた90年代でのヒップホップ東西対立という文脈をベースにまるでRPGのように世界各地を冒険するかのようなプレイヤーが関与できる場所やチャレンジを徹底して増やすことで、単なる自由度を越えた構成によって飽きさせなかった。

 やがて「GTA4」が現れた時にはこれまで許されてきた盗みも暴力も許されたゲームメカニクスと、アメリカンドリームを失っているにもかかわらずそれを求め現代のアメリカへ向かうセルビア人のニコ・ベリックをはじめ各国の有象無象の人間たちの現実というコンセプトと物語の興味深さは反発しあい、このタイトルに容赦のない暴動を期待するプレイヤーたちにそうしたテーマがハイライトとなることは難しかった。


 その後、膨大な数の都市オープンワールド(定義が広いのでGTAタイプを便宜的にこう書きます)ゲームが生まれ、当初新鮮かつスキャンダラスなこの構成も一般的なものとなる。「GTAV」は紛れもなくジャンルに飽きているくらい広がった中で投入されたパイオニアの一発ということで注目していたが、驚くべきことにここまでシリーズに飽き、オープンワールドのメカニックの限界を目視しても飽きさせない、新鮮な体験を投入しきっており驚愕させられた。

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 「GTAV」はまず、「GTA・バイスシティ」から「GTA4」で極に達したであろう、実質的な三人称のトニーやニコを鑑賞するように追いかける、といった構成から少々主人公造形を書き換えているのが印象深い。

 それは3人の主人公によるザッピングやマルチサイトという構成というだけじゃない。当然ながら、ゲームメカニクスとその上に表現されるキャラクターからストーリーというのを寄り合わせるには最初からゲームメカニクスから導き出された人物造形がなされなければならないし、また逆に登場人物やストーリー、世界観から逆算してゲームメカニクスを構成していく(こっちのケースは大変に難しいというが)必要がある。


 「GTAV」はこれまでシリーズが培ってきた基本的なメカニクスから主人公の3人が多重人格的に生まれてきたという感じがある。まず自動車を盗む、運転する、レースをする、苛烈なカーチェイスをするといった部分からは、フランクリンという人格に分かれ、街を歩く人間たちを自由に殴り倒し、銃で平然と打ち殺しギャングから警察に至るまで一人で全力で殺し合う一般社会の通念からしたらサイコパスでインモラル極まりない行動からはトレバーという人格に分かれたかに見える。それらを束ねる実質的な大きなストーリーを引っ張る主人格として、ミッドライフ・クライシスを抱えた元ギャングであるマイケルが中心にいるという関係のように映る。

 


 一人のプレイヤーがGTAというタイトルの中で行える行動がこのように人格分裂しているとしか見えず、実際に描写される人物の性格や人間関係の構図としてもダニエル・キイスの「5番目のサリー」のような典型的な多重人格を扱う物語の人物配置そのものとしか思えないところ(主人格の別人格として、躁病的としか言いようがない人格と、何もかも覚めて見つめる人格の分裂関係みたいな。少々スポイラーになればラストの展開も人格統合的ともこじつけて見ようと思えば見える)もある。


 もう少しだけこのアナロジーを続けるなら主人公の3つの人格の最後に加わる人格にプレイヤーであるあなた(それはGTA onlineで作り上げたアバターすら含めて)さえも含んで一つのゲームメカニクスの中で多重人格的に行動や物語を切り分ける体験をしているかのようである。

   GTAVを遊んでこのゲームを想起した方が同じようにおりましたらご連絡ください

 多重人格の話は行き過ぎると「フランクリンもトレバーも実は実在していないんだ、マイケルの憂鬱が作り上げた人格で全ての真相はフリードランダー先生しか知らない」なんて奇説に飛ぶのでここまでにするにしても、プレイヤーがリアルな街で行動できるメカニクスがこうして主人公たちに結実しているほかに、オープンワールドが進歩していくうえで最もウェイトがかかっているだろう現実の都市と風景と人々が息づいている世界観をリアルに描写し、本当のところは都市で生きる一人一人の人間全てに物語がある、という天上で俯瞰する神の視点と地上で感情移入する人の視点のハーフを3人の主人公という構成を起点として、おおよそ実現している。


 これまでもナンバリングの主人公と別に、DLCなどでリバティーシティーやバイスシティを舞台に全く別の主人公による物語というのが追加されてきたのだが、オレが思うにそれが表現したい本当のところはオープンワールドの都市と世界そのものこそが真の主人公ということであり、数々の人間たちの多角的な物語を載せることで立体的に示そうとしていたのだと思う。「GTA4」ではニコだけが主人公でなくバイカーのジョニーやゲイのトニーらを主人公にピックアップすることで、広い意味で多様な視点が与えられることで暗にリバティーシティそのものの姿を立体的に映す意味があったのだと思っている。

 

 「GTAV」ではその多角的な視点をまさにダイレクトに行えることが、この大都市の中の数多くの人々の中の一人ひとりの人生を追っている、という感覚にかなりぎりぎりのところにまで迫っていることが凄まじい。マイケルからトレバーに切り替えたときにカメラが一気に上空まで引いていき、プレイヤーがあずかり知らぬところで暴力をふるい息づいている瞬間に切り替わるそれは、かつて登場人物を多角的に切り替えることで数限りない人々が生きる都市の風景をコンセプトとしたサウンドノベル「街」が実践していたそれが、現代になって最大のクオリティとして眼前に現れたかのようである。

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   GTA3日本コンソール発売当時にメディアの一部が比較としても挙げられていた「街」

 実際、「数限りない人々が生きその瞬間瞬間に触れる」という感覚は様々な演出により徹底して保たれている。これまではミッション開始ポイントに入れば突然フリーランニングのモードからストーリーモード、ミッションモードへとスイッチが切り替わるかのようになっていたのだが、本作ではフリーランニングの時点でミッションの場所に登場人物たちや状況が揃っており、そこからミッションへ入ることであたかもプレイヤーが過ごした同じ時間にそこに登場人物も息づいて居た。とぎりぎりで感じられるように演出されている。


 街を歩いていれば、やはり街を息づく様々なドラマを抱えた人々の人生と交錯するようにできている。単純なところでは財布泥棒から自転車泥棒に遭遇することから、どうしようもないハリウッド女優崩れから妻と喧嘩したゴルファーなど様々な捻じれた連中と遭遇しどうしようもない会話を交わす。主人公たちからしてくすぶってどうしようもない奴らなのだが、やはり同じくらいにどうしようもない連中が街中にいる風景を、徐々に天上の神の視座から見つめるかのように錯覚してくる。主人公とそいつらの差は体に受けられる銃弾の数くらいでしかない。




    感情移入を促すアンダースコアの一つ 現代性と職能を果たす質の高さ


 同時に地上の人間への感情移入をも過去になくスムーズに行う演出も達者だ。その代表的な変化と言えばラジオで流れる様々なアーティストの音楽と別の、本作専用のアンダースコア(BGM)の導入である。

 
これまでトニーからニコに至るまで一人の主人公を追う構成のものを扱っていたにもかかわらず、ストーリーのシーンへの感情移入を掻き立てるアンダースコアの使用はほぼ存在していなかったと思う。鳴り響く音楽はカーラジオからだけ。それは都市の中のひとりが生きている風景の凍結したリアリズムであったかもしれない。だが「GTA4」のように登場人物造形とストーリーラインの必要の中では、その凍結感ではまとまり切らない面が出たと思う。

だがしかし本作からはそれが大転換したと言ってもよく、銀行強盗へ向かうマイケルたちや一人で多数のクズを殺しに向かうトレバーの心象を現すようなアンダースコアが全面に配置されており、過去作に比べての冷たさが減り、それはまるでハンディカメラで撮った映画から70ミリ大作映画に転回するかのようにシーン全体への感情移入を掻き立てるようになっている。これは何もストーリーミッションの中でだけではなく、ラジオをつけずに飛行機で空を飛べばその山と海の向こう、そびえたつビルの群れの雄大な風景を美しく表現するかのようにアンビエント・ミュージックが流れるのだ。



 このようにシリーズが培ってきた天上の神の俯瞰視点と、地上の人間が息づく感情移入という相容れないはずの両者がなんとギリギリまで止揚しているという点が本作を高い次元にまで持っていっているのは疑いようもない。メインストーリーのまとまらなさに関してやや批判はあるようだが、正直なところそれを追及するのは違うのではないかと思うしそれこそ相容れないものを混ぜ合わせたゆえの誤差、という気がする。


 GTAのオープンワールドという構成が弱点となる個々のアクションからレースといった深みや戦略の幅の欠如(つまり、「ゲーム」をあるルールによって勝利条件を競う競技性、という面での狭義のゲーム性の欠如)は正直言って発売前にここで書いたようにそのままだった。(主要なミッションの銀行強盗でさえも、シーンの強さは抜群だが「ヒットマン」シリーズ的に多数の戦略や選択肢があるものではなかった。) 


 なので本作が徹底して研ぎ澄ませたのはオープンワールドという経験の上のメカニクスの逆算した構成から、それから生まれる神の俯瞰と地上の人々への感情移入を同時に実現するために、初回に約8GBものインストールに代表される膨大なデータの搭載しきることで限界を突破したことだ。こればかりは、他のどんなデベロッパーがアイディアとして持っていても、体力(資金)も経験も人員もあるロックスターにしか実現できなかっただろう。


 選ばれたデベロッパーでしか生まれえない「GTAV」は凄まじい勢いでオレが今年遊んだPCやiosでのインディーズゲーム界隈からコンソールのAAAタイトルまでの数々の体験をも飲み込んでいる。オープニングの時点でストーリーのシーンとプレイヤーの操作を途切れさせない、シネマティックな体験は新生「トゥームレイダー」を 、偏執狂的なトレバーが数々の人間をアドレナリンので殺したり、また強盗に動物のマスクという薄皮の部分さえ含めれば「Hotline Miami」を 、ミッドライフ・クライシスに苦しみ自分の過去とこれからに迷うマイケルからはやはり近似していた「バイオショック・インフィニット」を

 かと思えば突如エイリアンやピエロの幻影と激闘するドラッグかつバカなシーンは「セインツ・ロウ」シリーズと対抗するかのようであるし、そしてTVやネットを付ければ膨大に行われる現代のfacebookからtwitterなどSNSからアニメに託した共和党や新自由主義への痛烈な皮肉は「killer is dead」のGHMがかつて出来ていたそれを 、そしてザッピングや多角的視点になり現実を見ることなどはもちろん「Gemini rue」はじめ 先述した「街」も含むアドベンチャーの数々をも飲み込んでいる。


 GTAシリーズ、そして都市オープンワールドはそのメカニクスの斬新さや革新性から時を過ぎ、ほとんど自分の感覚ながら申し訳ないが少なくない回数の限界やそれに伴う飽きをこのジャンルに感じていたのだが、「GTAV」は都市オープンワールドの構造の限界点や飽きを高いセンスと膨大なデータ搭載という手段によって突破している。


 今後ナラティブの側面だとか、ミッションの戦略性や自由度の幅という部分部分のみで上回る作品は現れると思うが、ロックスターのように膨大な経験と資金力が無い限り本作の頂には届くことは難しい、とは誰でも思うことだろうが、少なくとも最も早く「GTAV」の対抗馬となるのはUBIの「Watch dogs」になるのだと思う。

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