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2013年12月 2日 (月)

「anodyne」感想と考察 ダークサイド・オブ・ニンテンドーの系譜

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 「anodyne」はゼルダのゲームデザイン引用どうのこうのなんて話からスタートしてもどうだっていいことで、むしろこれは「ドラゴンクエスト」にとっての糸井重里の「MOTHER」「バイオハザード」にとっての須田剛一の「killer7」みたいなもので自分が表現したいもののために既存のデザインを使っているタイプのゲームだ。


 そうしたビデオゲームがゲームメカニクスを越え、プレイヤーの深層心理にまで食い込んでくる印象を与えたように、このゲームも相当に内省的である。ここのところのインディーズ界隈は何故憂鬱さや逃避的なチルウェイヴ的な作風が少なくないのか?ということ込みの「anodyne」のレビュー。

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 このゲームが内省的で陰鬱さを抱えたムードに包まれているのは「anodyne」というタイトルの意味の時点でよくわかる。


 「anodyne」とは日本語に訳して「痛み止め」「鎮痛」という形容詞や名詞を意味し、そして「感情をやわらげる」という意味を持つ。その言葉が暗示するように、このゲームの世界とは主人公ヤングの孤独で憂鬱な心象風景を掘り下げた旅をするという意味が強い。


 全くの真っ白な空間からゲームがスタートし、そこから少し進むと村長と呼ばれる人間から「ブライアから闇の世界を取り戻せ」というような典型的なRPGの目的を提示され、ポータルを行き来して世界各地への冒険が始まる。



 ゲームメカニクスと進行はそのまま「ゼルダの伝説」を簡略化したものと言え、アイテムはほぼ主要武器であるホウキ一本であとはジャンプが可能になるブーツが加わるくらいで、ほぼその二つだけでこのゲームのすべてのアクションやパズルは解けるようにできている。ボムもブーメランもない。それどころかお金さえ端から存在しない。

 主に各地に散らばった登場人物たちが描かれたカードを集めることで新しい場所への門が開いたり、最大ライフを増やすための場所を発見したりすることができるのだが、そのカードごとに書かれた言葉も暗にこのゲームの物語理解を促すものも少なくない。



 しかし、行く先々こそ草原や森、山々といったやはり典型的なロケーションが出てくるとはいえ、そこに壮大な冒険を予感させるものではない。それはその場所で奏でられるBGMが揃ってアンビエント・ミュージックやクラウトロックあたりの内省的で音響的なサウンドを使っていることが大きい。

 元ネタであるゼルダの伝説のようなオーケストレーションや、分かりやすく感情を掻き立てやすい四つ打ちのテンポのいいサウンドを搭載することを意図して避けていると思われ、なんせほぼ全てのBGMにドラムパートが使用されていない。ノイズやダブといった音響を生かした音楽にすることを徹底している。

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    義務と権利のように「ゼルダの伝説」パロディ。 他にもこのゲームでお金は一切存在しないのにゼルダ風のお店が「何ドルかでこれらを売るよ」みたいなanodyneの構造の逆パロディもあったりする


 


 グラフィックは16-bitで描写されたキャラとマップの上に薄いグラデーション処理が加わっているという、小規模制作でいまやよく見られるようになった構築の仕方をしているんだが、BGMの陰鬱な美しさを引き立てるように、優れた色調の調整によって感傷的な光景を作り上げている。グラフィック・BGMが合いまって、潜在意識的なムードを発現させる部分においては「Hotline miami」に匹敵する。(ちょうど主要なクリエイターが二人組であるということさえ含めて近似していると思う)


 ゲームを進めるごとに突然現代的な道路の中であったり、「MOTHER2」のギーグのような背景の空間を抜けると夜景の見えるホテルに入るなどの分裂的で夢の中で意識が切り替わるかのようなな演出が増えていくのだが、カードに書かれた言葉や石に書かれた言葉を読んでいく中で徐々に主人公ヤングの陥っている現実というのが反射して見えてくるという仕掛けになっている。

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    外界を経ち、孤独の中で自分の意識の中にばかり潜る先達「ゆめにっき」


 それは「ゆめにっき」の主人公窓付きがベッドで眠る前の、ファミコンとテレビが明滅しているあのマンションの環境に近いのかもしれないし、実際いくつか目にしたレビューでも「ゆめにっき」との比較は少なくなかった。


 自分はさらに日本フリーゲームのヘンリー・ダーガー「タオルケットをもう一度」シリーズの陰鬱さや自傷的なムードも感じたし、さらに振り返ればそれらが影響を受けていたであろう「MOTHER」シリーズからしてあれは現代が舞台という当時のRPGでは珍しい背景以上にビデオゲームを介して潜在意識や無意識を描こうとしていたことが大きいだろう。


 そもそもの糸井重里が「ドラゴンクエスト」を遊んでいた当時の感覚や精神状態が「MOTHER」の原型となっていき、それがフリーゲーム界にまで影響を与えていたように、「anodyne」「ゼルダの伝説」などを作者たちが遊んでいた時の感覚や精神状態が原型になっているかに映る。

 それは部屋で孤独にファミコンのコントローラーを、ゲームボーイを握りしめて没頭している時の精神や感覚そのものの投影のようだ。今回もiosでプレイしていたんだが、そうした携帯機でゲームに没頭していくという体験さえ含めて、このゲームが海外の評価などに「ゲームボーイカラーのような」という言及があったように自分はやはり子供のころに遊んでいた「ゼルダの伝説 夢を見る島」を思い出さずにはいられなかった。

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    夢→潜在意識=ビデオゲームの世界というイメージを打ち出した「夢を見る島」



 「夢を見る島」は現在惜しくもリンクが無くなってしまっているのだが、かつてゲーミアン様
が言及していた「夢そのものがゲームのメタファー」といったメタフィクショナルな側面を語っていた。インタビュー(リンク先のQ5)にて作者もお気に入りだ と語っており、影響は受けていると思われる。


 「anodyne」他人への恐怖感や孤独、現実への逃避としてコントローラーを握っているその憂鬱さと美しさの感覚がその世界を形作っており、それがゲームを進めるごとに現実へと、他人と再び触れにいくという結末へと近づいていくという製作者たちの箱庭を追体験していくような感覚を受ける。(ちょうど糸井重里が「MOTHER」を箱庭と言ったように)



 それにしても初代の「ゼルダ」「ドラクエ」もあれは3人称でプレイヤーが物語を眺めているなんてもんじゃなく、徹底して主人公はプレイヤーである自分でありあなただ。ということを貫いているスタンスのゲームが、糸井重里さえ含む後の世代にはそのゲームプレイ体験が自分の精神や感覚を掘り下げていく体験へ繋がったかのように、ゼルダやドラクエの構造を使って潜在意識の中に潜っていくという系譜がなにやら出来ているかのようにオレには感じてしまった。


 当のゼルダシリーズにせよ「夢を見る島」だけでなく「時のオカリナ」の裏として「ムジュラの仮面」があるわけだし、「anodyne」とはそうしたゼルダの一人称の体験から生じるダークサイドを遺憾なく発揮した作品だ。


 anodyneはios版をプレイ。

でも操作性を考えるとsteamなどでDLしてPCで遊んだ方がいいかもしれないです

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