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2013年9月 4日 (水)

あの90年代から00年代へ繋ぐテクノロジーの美しさ溢れるADV「The Longest Journey」感想と考察・海外アドベンチャーゲーム名作研究

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 あまり日本では知られていないのだが、海外のPC界隈による伝説的な評価を受けるアドベンチャーのシリーズがある。それが「The Longest Journey」だ。海外サイトAdventure gamerにてオールタイムベスト100戦の内、2位にランクされPCgamerでは全ジャンル含めてのオールタイム100でも上位にランクされているノルウェーが生み出した本作を名前だけずっと聞いていたんだけど、最近になってようやく遊ぶことが出来、クリアしたのでその感想と考察。

 
 1999年にリリースされた本作は、オレの今の時代の目でみればそれはとても懐かしい光景だった。技術は5年前のものはダサく、20以上年前のものはコンテクストとして味になるというのは昔からあることだけど、(今の8ビット16ビットの絵面や音響のように)では14年前のこのころというのは味になるだろうか?

 

 この物語はSFと西洋ファンタジーという、小説から映画、そしてビデオゲームが題材にしてきた大きなモチーフ二つを舞台としている。それぞれSF的な近未来世界は「スターク」、西洋ファンタジー世界は「アルカディア」と呼ばれ、この二つの世界を行き来するアドベンチャーだ。


 主人公エイプリルは近未来世界スタークにて美大生として近所のバーでアルバイトをしながら寮で暮らしているのだが、ある時より奇妙な夢に悩まされる。それはなんと異世界アルカディアとここスタークとの、二つの世界のバランスが崩壊しかかっていることの予兆であことを知らされていき、エイプリルは二つの世界を行き来してこのバランスを調律し直すシフターとして長い旅をする。


 

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 そんな風にあらすじだけ書けばそれはなんてことないんだけれど、オレには90年代ごろのまだCGで何を描くか、どう描くのかといった部分でSFとファンタジーの二つを題材にして描く手触りがとても懐かしく印象深い。



 まだ3D技術水準がそこまで高くは無かった頃、必死で描く題材には概ね「GADGET」 だとか「エネミーゼロ」(なんてチョイスだ)だとかはSFやバウハウス経由のレトロフューチャーをモデルとしており、初期のプレイステーションを振り返っても多くはそうしたモチーフを使って描いていた。




 この頃そうしたモチーフが多かったのもまだ自然物を美しく表現することが難しかったからだろうか?2次的テーマとして「初期CG技術=近未来=文明」の構図が多く、自然や幻想といったファンタジーを描くのは映画などの動向を見るに2000年を超えてからになっていたのではないか。非常に乱暴に書けば90年代までは「マトリックス」だとかが近未来CGの頂点として、ファンタジー&自然のアプローチが始まるのは2000年代初期の「ロードオブザリング」はじめではないだろうか。

 このCGで描かれる世界の変換というのを分かりやすく示しているのは映画ではジェームズ・キャメロンかもしれない。90年代には「ターミネーター2」「アビス」にて近未来世界のSFの光景としてCGを利用していたのだが、2010年に話題となった「アバター」では徹底して架空世界の自然物や現象をCGで表現するようになっていた。(もちろん実写に組み合わせるためにCGを使うのとフル3Dというあまりにもな構造の違いがあるので大きくは言い切れないが)

 そしてまだ全てをCGでリアルタイムレンダリングするまでの技術も出来ていないため、基本的には「FF7」「バイオハザード」がやっていたプリレンダマップにリアルタイムレンダリングの人物や車などが動くという形式がオーソドックスであり、重要なシーンに入った時にプリレンダムービーが再生される。こうして何とか壮大な世界観を感じさせようとする、当時の技術ならではのテクニックだ。しかしそれがオレは今見ると「味」にカウントするべきそれに見えるんだけどどうでしょうか。

 「The Longest Journey」はそんな風に90年代の時点の技術によるイマジネーションで溢れており、そのスタークによる近未来光景もさることながら、2000年代に入ってからようやく活発になったファンタジー&自然を描くアプロ―チもおそらく早い段階で取ってるんじゃないか?とそのアルカディアの光景の二つを描いていることは、1999年というリリース時期も含めてSF世界とファンタジー世界の調停を巡るエイプリルの旅路は進歩していくCGでのイマジネーションの世界と同義のように映った。




 もう一つ、今は2013年で15,6年前くらいに溢れた、当時最もCGで構築された世界を壮大に見せるこの技術は一つの味としてリバイバルされることはあるのだろうか?映画においては70年代の荒れたフィルム風味・遡ってモノクロなどの撮影技術をそのまま味として生かしてるというのはよく見かけるけれど、こうしたCGや特撮といった技術の側面ではなかなかそういうリバイバルってのは難しいのだろうか?





 ビデオゲームにおけるこの時代のプリレンダ背景・リアルタイム人物による固定カメラのカットで進行して決めのシーンでプリレンダムービーというのは今のオレにはそれは「味」と判断しちゃうんだけども、現在ゲームのヴィジュアルで8ビットや16ビットの起用というものはありふれてるが、90年代中・後期のこうしたヴィジュアルでしか生みだし得なかっただろうイマジネーションをすくいあげ、リバイバルさせるという日は来るだろうかなんて思った。事実「The Longest Journey」はそうしたイマジネーションによって成立していると思ったので。

(※ とかここまで書きながら1998年にはリアルタイムレンダリングで自然オブジェクト系の「ゼルダの伝説 時のオカリナ」などあったことをふと思い出し、やっぱり適当です。正直スマン!やっぱり任天堂は偉大か!とかいいそうになりながら日本の家庭用から海外PCまで含めりゃCGが描くファンタジーや自然には枚挙にいとまがないか・・・ま、本作はCGが描きだすイマジネーションのメインモチーフの変換ということで・・・)

The Longest Journeyはsteam/GOGにてリリース。


英語難易度:ADVなのでテキスト量は膨大。だが基本的に会話の応酬であるし、婉曲的な表現など難解な単語使用による表現は少ない。そのため理解は容易。

 

二つの世界を表す「アルカディア」とか「スターク」など作中の専門用語が少なくなく現れるのに戸惑うところはある。が、世界観的にはオーソドックスであるし、暗喩を多用する類ではなくストレートな語り口のため慣れやすいとは思う。ボイスアクトも良好だしキャラクターもいい感じにわかりやすいため決して難しくはないし馴染みやすい。

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コメント

クリアおめでとうございます。些細なことですが、ベルギーでなくノルウェーかと。
オリジナルは1999年の発売であるものの、最初はノルウェー版であり、そこから各国に移植されました。北米は2000年11月なので、たぶん英語圏の人には2000年のゲームに見えていたように思います。
UK版ないしUS版が日本でも手に入るようになったのが2001年頃で、私がプレイしたのもその年だったように思います。パッケージに2000と書いてあるので、調べるまでは私も2000年のゲームと思い込んでいました。
ADVの中心はずっと英語圏だったのですが、ゼロ年代に入る頃から非英語圏に中心が移ります。
フランス、スペイン、ドイツとか、その辺りになるでしょうか。SYBERIAもフランス製ですね。数だけならロシアも含めて良いのでしょうが。
TLJはその先駆けみたいなもので、英語圏以外にも優れたADVがあるのだと、いち早く世界中に証明した点で更なる歴史的付加価値があるのかなと。
他方で、非英語圏のADVがUS版やUK版に移植される場合、その時期が大事になるのかなと思います。TLJならこれは99年の作品なんだという感じで、発売時期を考慮してプレイするべきだと個人的には思うものの、やっぱり自分のプレイ時期で判断してしまう人も多いです。英語圏は後回しで仏語や独語を優先させて評判になった作品が数年後に英語化されても、どうも評価が芳しくなかったりしますので。私は仏語はサッパリで独語は辞書を使えば少しは・・・って程度ですが、ゼロ年代前半には英語のレビューサイトは最早時代遅れであてにならないと思い、フランスやドイツのサイトを信用していましたし。TLJは幸運にも翌年に移植されたので、それも今日の高評価につながっているのかなと。ファンとしてはオリジナルと同時期の発売だったらと思ってしまいますし、逆にもっと遅かったらまた違った捉えられ方をされていたかもしれません。ちょっとうがった見方で異論も十分ありえるでしょうが、どうもこの頃の作品に関しては時期に過敏になってしまいますね(ゲーム機だとPSからPS2への頃でもあり、1年とは言え、変化の激しい時期でしたから)。

>katanさん

うわあすみません、ノルウェーに修正させて頂きました!
英WIKI見ながらのこの体たらくでした。

いやーADVGAMERさんにコメントいただくのは
本当にここ数年で海外ADV知った身には
非常に緊張するのですが(笑)、
まだまだその周辺を遊び切れていないというのもあって
エントリの切り口がSFとファンタジーという
2大モチーフを描くことによる
CGでの架空世界の構築といった文脈に留まってしまいました。

さすがに欧州のADV事情に関しては
ヤバいくらいザルなので、欧州圏で評判になったのちに
英語化して広い範囲にリリースという構図と評価の関係など
大変唸らされるものがあります。
本当にこのあたりのADV事情ってなかなか知るのが難しくて・・・


ハードの進歩による時代変化と評価ってことでは、
PC界隈でのADVオールタイム企画をいくつか見たんですが
90年代中~後期ごろに高い評価を出した作品が選ばれており
この辺もテクノロジー過渡期で
基礎に高いヴィジュアルやアートデザインがあり、
謎を解く・インタラクトするレスポンスで
豪華なムービーによる物語の推進がある、という
初期PSも含め、ビデオゲームにもたらした
進歩と感動面ってそこが大きかったのだろうか?と思っております

SFとファンタジーは、この時期の海外のADVでは一杯ありますよね。
その2大モチーフに正面から挑み、期待に応えたというのは大きいです。
そりゃ、人気も出るってものでしょう。
もっとも、その理由とかをあまり考えたことはなかったので、
記事も楽しく読ませてもらいました。
他方で、最近のカジュアルゲーム関連のADVは幽霊が絡むものが多く、
その変化に何か理由でもあるのだろうかとか考えてしまいますけれど。

オールタイム企画は、80年代に思い入れがあれば80年代中心になり、
90年代に思い入れがあれば90年代中心になるなど、
その企画者の経歴や年代を見ないと何とも言えない面があります。
野球のベスト企画とかでも現役が一杯入るように、
投票制だと現役ユーザー中心にならざるをえないですし。
国内でも周りで叩かれて子供向けと言われていたゲームが、
ちょうど子供の頃に遊んだユーザーがネットで発言力を増す年代になり、
いつの間にやら名作扱いなんてケースを幾つも見てきましたから。
だから単に今ネットで発言する時間を持てる年代が、
90年代後半に楽しんでいただけかもしれないとの疑問はつきまといます。

ただ、その上で、個人的にはやっぱり90年代半ば~後半が楽しかったですけれど。
実写を用いた作品は90年代半ば、CG中心だと90年代後半でしょうか。
その後は時代が3Dへと向かっていきますが、
実写とCGでやれることほぼをやり尽くした一方で、
アクション性を要しない純粋なADVでは3Dの恩恵が少なく、
かえって一画面内から伝わってくる芸術性のようなものが損なわれ、
ADVの魅力が失われていったのかなと。
純粋なADVは無理に3Dにする必要はないのではないか、
最近のカジュアルゲームという名の衣を被ったADVの発展、
例えばダークパラブルズシリーズのような作品を見ていると、そんな風に思えてきます。
先日国内でも発売された「ライト・オブ・パッセージ:樹海の子供」などを見ていると、
80年代・90年代のADVの本来進むべき進化の姿がここにあるのではないかなど、
そんなことを考えてしまいますね。

>katanさん

やはりビデオゲームはどうしてもテクノロジーに由来しているがために、
ある時代でエポックだったものが次の世代では当然のように実現できるがために、
その当時革新性や尖鋭性だった部分が
他ジャンルに回収・実現されてしまう、というのは多々見られ、
いまやRPGもアクションも美味しいところを喰らいあって前進しているのですが、
ADVの持つ「探索・推理によってフラグを立て、豪華なムービーや物語の推進力のレスポンス」
という構成は確かに2000年代以降は他ジャンルに競り負けてしまっているのだろうか?と感じます
(ただこれは自分の家庭用ゲーム史観&急きょ付け足しの海外ADV史観の実感ですが・・・)

現在はsteamやGOGはじめDLサイトの普及やスマートフォンの普及により
ジャンルのテクノロジーや構成の進化という垂直方向の進歩というよりも
水平方向への進歩が顕著と映り、
Wadjet Eye Gamesなどがシエラオンラインリバイバルという空気の作品を
出してんじゃねえかなあと思われる一方で、
「Dear Ester」だとか最近評判の「gone home」などの
FPS脱構築のADVなどなどが一つのクリエイティビティ出してるように見えます。

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