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2013年8月31日 (土)

そういえば「鬼武者」シリーズはなぜ新作が出なくなったか?の2、3の邪推・スラッシュアクション仮説の歴史・余談

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 さてここのところの個人的リサーチ「スラッシュアクション仮説の歴史」シリーズまとめてる時に、そういえば「鬼武者」シリーズっていつの間にストップしちゃったんだろうなと思ってちょっと振り返ってみたら、これ今考えるとすげえ豪華だったんだなと気付かされる。



 いまでは中古屋でとんでもない安価がついちゃってるけど、当時のPS2への次世代機移行すぐの新作ってことで付加された多くの豪華さは未だに印象深い。グラフィックスから音楽に見るゲームプレイとカットシーンの出来る限りの結合による、俗に映画的進行や、数々の俳優やクリエイターを招くことで世間にも希求しながら当時としてはまだ未完成だったろうスラッシュアクションのメカニクスを武器にするという意味で、初期のPS2がもたらした光景として最も記憶に残っている。がしかし、そんなエポックを感じたシリーズが何故いつ停滞することになったのか?


 もうPS4だXBOX ONEだという時代に、日本製作の据え置きでのビデオゲームはmk2のアクションの欄を見ればわかるけど気が付けばスラッシュか無双にキャラ乗っけるだけみたいのに溢れてて貧乏くさくなっちゃった今と比較して、金も技術も覇権もまだ日本にあった12年前の豪華なスラッシュ代表シリーズ・レトロスペクティブ。なぜ今ブラウザゲームが新作と言うことになってるのかの邪推。



■新規スラッシュアクションに豪華クリエイター・俳優を参加させる豪華絢爛時代

  今のような目立ち方をする前の鬼武者製作時の稲船敬二。数多くの外部スタッフを引き入れる体制で製作していたという

 さてスラッシュアクション仮説の歴史3章でまとめたように、アクションの新規タイトルに俳優や有名クリエイターを多数絡めていって豪華さを高めてフックにするって手法は映画などではオーソドックスな手法だがビデオゲームの界隈でも多数見られた。あの集客手法はどこが最初にやったんだろうか?

 これはスラッシュに限らず、2000年代後期ぐらいまで少なくない日本のAAAタイトルがやってきていた。そういやもう今はそういうの見なくなってきた。


 オレはビデオゲームで他ジャンルの人間がどんどん絡んでくるのは大変面白がるんだけど、実際の現場レベルの方からすると大変迷惑をこうむることが多いだとか、実質的な技術蓄積というのが結果的に積み上がりにくいため歓迎しないとか噂で聞くんだけど、あの時代での日本でのAAAタイトルのプロデューサーというのはいかにビデオゲーム興行を豪華にして一般世間にも引っ張ってこれるかを画策する山師という意味で稲船敬二の仕事は優れていた。(翻っても坂口博信や広井王子や日野晃弘など、最近の「ジョジョオールスターバトル」の松山洋などなどファミ通はじめ大手メディアに名を出し発言が目立つ彼らはみんな優れた山師だ) 


 「鬼武者」シリーズに招聘された有名俳優や外部クリエイターはそれはもう錚々たるメンツだ。もちろん主演の金城武をはじめ、CGムービー監督に佐藤嗣麻子「ブギーポップは笑わない」「牙狼」金田龍「ジュブナイル」「3丁目の夕日」山崎貴、クリ―チャーデザインには雨宮慶太などなど、さらには香港アクション映画界の大物、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」「HERO」ドニー・イェンまでもアクション監督として呼び寄せているのである。




 さて主演を彩った俳優たちを振り返っても今考えても金城武というチョイスは絶妙だし、とんでもねえ離れ業として松田優作まで起用するのは今考えてもすげえと思うのだが、この逸話の裏には嘘かほんとかこういう話がありやけに感動的だ。


 「さっそくお願いに上がったんですけど、当初、松田美由紀さんは難色を示したんです。」とのことだったんだが、なんと「ゲームを知っている息子さんたち2人にも意見を聴いてみた」ところ「鬼武者」続編と分かるやいなや「やろう!」と即答!稲船もそこで「ありがとう!龍平くん!」と吠える!優作の息子・松田龍平はハードコアなゲーマーとして一部有名であるが、当時から多分ゲームファンだったことでこのコラボが実現する一因になったというのはいい話な気がする。

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    現在は交響曲「HIROSHIMA」で有名な、被曝二世であり聴覚障害を持つあまりにハードな経歴を持つ佐村河内守のシンフォニーがカプコンのバイオや鬼武者を締めていた



 また佐村河内守、岩代太郎を擁してきた
恐るべきサウンドプロダクトも今振り返ると作品を統一させ、映画の中に没入するかのような効果を挙げていた。当時のビデオゲーム界隈を見るに、カットシーンとゲームプレイってのは別物なので平然と別々の音楽を用意し、それぞれを強調していくわけで、特にRPGなんかが戦闘・フィールドなど幾重にもセクションが分かれるため分かりやすいと思うのだがそれぞれにフックの強い音楽を置いていく。


 そういう分裂が当たり前な中でカットシーンから実際の戦闘への音楽性の分離というのを最小に抑え、実際の映画音楽の製作手法とそこまで相違ない、ある意味「アンチャーテッド」ばりのアンダースコアに出来ていることも、特にモチーフやロケーションに余計な要素が少ない初代の鬼武者では上手く出来ていたのではないか。これはアクションアドベンチャーと言うジャンルゆえのリニアさと、シーンとゲームプレイのムードの乖離少ないことが可能にしたことのように思う

 

 

■そうした豪華さの骨格にあるそのゲームメカニクス&デザインは・・・今振り返るとすごい地味! まさかシリーズ停滞の理由は他スラッシュに快楽のメカニクスで負けたからか?

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       今見ると、何より敵の攻撃に合わせることで始まるという溜めを要求する渋いスラッシュ

 このようにファンタジックな時代劇映画を追体験するかのような構成、そしてカットシーンとゲームプレイ間の違和感が極小にされているという、映画音楽による構成に近い構成などから金城武や松田優作を起用する豪華絢爛な外殻を持つ一方、その骨格であるスラッシュのメカニクス&デザインはどうだったか?それは「鬼武者」以降に出回った無双シリーズの拡大や「デビルメイクライ」などと比較すると分かるのだが、基礎の3Dスラッシュアクション構造の構築が遅れたと見えたり、根本のスラッシュの快楽をもたらす要点がものすごい地味なものだった。



 それは、より直感的な操作が要求されるだろう3Dアクションでバラジコン移動を引きずっていたり、プリレンダ3Dでのマップ描写などなど「アローンインザダーク」「バイオハザード」経由の構造に引っ張られているままであり、それに対して同じくバイオの系譜であったはずの「デビルメイクライ」はスティックでの自由移動とマップのリアルタイムレンダリングを実現していることなどスラッシュアクションの体勢を整えていた。「鬼武者」がそこに至るのは2004年の「3」になってからであり、稲船インタビューでも「ゲームエンジンをイチから作り変えたので……。そこが一番苦労しましたね。」と語られている。


 スラッシュ&無双は膨大なコンボや膨大な群衆、巨大な敵を一網打尽にしたりするという火力が強ければ強いほど煌めく構造であるので、一部の隙も無く詰めたゲームプレイ構成が順当な進化なんだと思うのだが、「鬼武者」がメカニクスの要点にしているのはあの敵の動きを読んでの「一閃」システム。これがもしかしたら楔になったのかもわかんねえなと今思う。わざと俗に書けば、ゲーム性が高まりにくい構成であったせいでシリーズが行き詰まりかける面はあったんじゃないか


 スラッシュアクションは「斬撃(近接攻撃総称)」から「銃撃(中~遠距離攻撃総称)」まで全ての距離の局面から隙間なくコンボを繋ぎながら、敵の攻撃を見て「回避」するか、攻撃をジャストで合わせて「防御(敵攻撃にジャストで行動を合わせる総称)」でよろめかせるかカウンターを取るかと言った4つの攻防の回転がスムーズに隙間なく回るほど質が高くなると思われる。今のところこの究極を実現してるのは「ベヨネッタ」「ニンジャガイデン」と思う。



 だが、「鬼武者」は突き詰めればこの4大要素の中で「防御」だけに見返りがあり、ゲームは高難易度になればなるほどメカニクス&デザインのコンセプトが良く現れるものだが本作は敵攻撃のタイミングに合わせてのみダメージが入るという一閃モードが究極にあることにそれが強く現れている。


 

 ところが徹底的に相手の攻撃を待ち、引き寄せ後手で合わせ、カウンターを取るというスタイルは「デビルメイクライ」でも「ニンジャガイデン」でも取り入れられており、しかも高速のコンボの攻防の中でそれを行うことが以上タイトルでは可能なのだ。結果、「鬼武者」はゲームメカニクス&デザインで構造上、他スラッシュの方が多くの攻防の中で高い「防御」の攻防を組みこめているために劣ることになったというのが停滞の一因にありそうな気もする。


 また主要スタッフがゲームリパブリックとして独立していってしまったというのもありそうだが、そのリパブリック作品の純スラッシュ作品の抜けの悪さと言うのも遡ればこの時点で兆候は出ていたと言えるかもしれない。

■稲船敬二から小野義徳へとプロデュースが変わった「新・鬼武者」の変貌とは・・・遅れてのスラッシュ無双寄りとBASARAばりのキャラゲー化だった!



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   シリーズ重ねて行くたびに戦国時代の規律やムードは消えて行くが、新生はキャラデザ見るだけで完璧「BASARA」系へとぶっちぎってるのがわかる




 スターや音楽家起用、映画的構成により、世間に希求させていこうとする稲船プロデュースから手を離れ、ストリートファイターシリーズを担当してきたという小野義徳によるプロデュースによる「新・鬼武者」はもう180度方向が変わってる。完璧にアニメ&ゲームファンに向いたエクスプロイテーションと化してる。


 それはキャラクターデザインからゲームメカニクス、そして音楽演出に至るまであの時代劇映画をドライヴしているかのような実感が薄れ、プレイアブルキャラの背後カメラによるスティックでの自由移動&フル3Dでのアクションゲームステージ化しており、「デビルメイクライ」路線のハイスピードスラッシュ系統に舵を切っているし、日本のRPG的な蓄積・収集要素の搭載などで過去シリーズから方向が変わってる。


 しかしカプコンでは同じ戦国武将を使ってのエクスプロイテーションは「戦国BASARA」が2005~2006年の間に無双シリーズの爽快感プラスキャラクターデザインの方で確立し、タイトルを拡大させているし、スラッシュでは「デビルメイクライ3」が完成形に持っていってしまってるし、従者システムによる仲間との共闘や、アイテム収集や経験値蓄積のような面も実際のCOOPの「モンスターハンター」に比較して意味あるのかなどなど「新・鬼武者」でなければならないというポジションというのをもしや作り切れなかったからか?というのもシリーズストップの裏にありそうな気がする。



■結局、鬼武者はなぜ新作が出なくなったのだろうか?そして続編は・・・


 シリーズがストップする理由の現場レベルの事情は一切わからないので、「鬼武者」がフックとしていた部分からゲームメカニクスからこうして邪推していくと、なんとなくそうなった理由も分かる気がする。

 

 2000年代初頭に豪華絢爛なゲーム体験を作っていたこのシリーズも、優れた山師である稲船敬司のプロデュースによるような豪華さを作る有名俳優起用や外部クリエイターの採用が離れ、後続の「デビルメイクライ」などにスラッシュのメカニクス&デザインで劣り、「戦国BASARA」などに無双エンジンのライトなキャラクターアクションという感情移入コンテンツ面を奪われるなど、PS2で初のミリオンを突破したタイトルながらトータルの意味でジャンルを牽引するための地盤を固めきれなかったのではないか。


 推測される様々な停滞のなかで、このタイトルでなければできないというポジションを失ったかに見え、気が付けばパチスロ化・ブラウザゲーム化とコンテンツを骨までしゃぶるチャプターへと突入してしまっている


 もはや新作の芽はないのか?と見える矢先、ちょっと調べ直したら近年のカプコンが行っている海外デベロッパーとの製作という形で続編製作の可能性という噂がちらほら流れており、その中には「DmC」を製作したニンジャセオリーが行うではという噂もあるらしい。



 どうせなので続編(またはリブート)を想像すると、実のところ「鬼武者」の本懐とは、スラッシュアクションではなく「アンチャーテッド」だとか「新生トゥームレイダー」のような、リアルなモーションで高次のグラフィックスと演出とゲームプレイが混ざり合う方向で、映画のような流れとドライヴさせる方向のほうだったのではという気がする。少なくとも、当時初めて「鬼武者」を触った時の感動と言うのはバッサリ感というよりもむしろ劇映画の中をドライヴするようなそうした統一だった。それはシリーズを重ねるにつれ緩んでしまうのだが・・・これは「バイオハザード」に関しても似た感情がある。



 そしてやっぱかつての「鬼武者」を彩っていた、世間を引っ張る山師らしい有名俳優起用も欲しい。そう、今なら松田龍平と能年玲奈を起用せよとオレの中の稲船が狂おしく叫んでいるのだった―

 


 
 



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コメント

これだけは言わせて下さい。
松山洋だけは絶対に許さん。

>dさん

謎のばばあ「ジョジョが生まれてより20数年。
幾度も人は、ジョジョをゲームにしょうと試みてきた。
が、その度にジョジョファンの群れが怒りに狂い、地を埋め尽くす大波となって押し寄せてきた。
国を滅ぼし、街を飲み込み、自らの命が飢餓で果てるまで、ジョジョファンは走り続けた。
やがてコブラチームの骸を苗床にして
胞子が大地に根を張り、広大な土地がASBに没したのじゃ。
ASBに手を出してはならぬ・・・」

ps3で鬼武者が出れば間違いなく売れると思うのにどうして作らないですか?鬼武者ファンとして悲しいです。 ps3の鬼武者を作ってください。これほどの名作をなぜ作らないのかファンとして不思議です。

>synyster tetsu さん

鬼武者はこのエントリでは
「ゲームメカニクスの深みがDMCやニンジャガイデンに構造上劣ったから」
「金城武など有名人を大きく起用するほどの予算もないから」
「以上の理由でタイトルの発展性が見込みにくくなってしまったから」
と見ています。

でも今のノーティドッグ「ラストオブアス」のような方向性で、
映画にアクセスするかのようなハイクオリティの方向性の
サバイバル時代劇の可能性に賭ける、てのはみたかったですね

2→3→1→新とプレイしてきて10年。
2に関しては何周したかわからないくらいやり込み新では歴史オタになる程感情移入したのにもう9年程続編が出ない…。
新の最後だけで茜の行く末を考えるのは感情移入した身としてはあまりにも辛すぎる。

>(命名)よっしゃあ金城武唄さん

2は相棒ごとに変わる展開、亡くなった松田優作をCGで再生などなど、
雨宮慶太クリーチャーデザインと今考えても明るい闇鍋(どういうことだ)な面白さに満ちてますね。

しかし「新」で歴史オタクですか。
戦国BASARAとさり気にカプコンはその界隈に影響を与えていたんでしょうか?

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