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2013年5月

2013年5月27日 (月)

文明は如何にして拡大し、世界はいかにして征服されるか?「シヴィライゼーション」と「銃・病原菌・鉄」

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海外ロングセラータイトル「銃・病原菌・鉄」とビデオゲーム「シヴィライゼーション」ミックス感想と考察

 現代世界の成立において、結局のところ西洋文明・それからアメリカが切り開いてきたものが大抵の方法論を形作り、世界に広げてきた。しかし逆に見れば、ではなぜ他の優れた文明ではなく、西洋文明のみが世界に拡大していき覇権を握ることができたのだろうか?

 今日の発展した文明の中でも、大昔からの生活様式から変わらないニューギニアへのフィールドワークを行ってきたジャレド・ダイアモンドが現地の文化と人間と接する中でそうした疑問を持つに至り、西洋文明だけがいかに世界的に拡大するに至ったのかを考察した成果として「銃・病原菌・鉄」という本にした。


 ではいかにして西洋文明だけが世界的に拡大することが可能だったのか?の考察の軸とはタイトル通りの銃や鉄の生産による軍事力から、ヨーロッパの人間が耐性を備えている病原菌の媒介によって、耐性のない現地の人間が感染してしまうことなど植民地支配にアドバンテージがあったことに加え、植民地にした後での牧畜・農耕が可能な地域や、アメリカやアフリカ大陸の南北への広がりと比較してユーラシア大陸の東西の広がりの大きさという地理的要因などが大きく語られている。

 そしてなぜニューギニアなど文明の栄えた今日でも旧来からの生活を続けている国があるのかというと、その地域では西洋の方法による牧畜や農耕によるコロニー化がとてもやりにくい場所だった、ということから植民地に出来なかったという。また、同じユーラシアにて大国となっていた中国がなぜ拡大しなかったのかと言うのを、むしろ中国は権力が一極にある強固な社会体制であるゆえに流動が無かったためだと考察している。


 さて西欧文明的なものの先端と言っていいビデオゲームでさらにそういう文明・文化の発達と侵略といった歴史をシミュレートしたものと見える「シヴィライゼーション」などを遊んでいるとその勝利の目的が単なる他国を侵略して征服することだけではなく文化的・経済的な勝利というのが本作のルールの特徴なのだが、このゲームデザインとその目的はまさに西欧文明発の拡大の最終的な勝利の形だ。

 そこには西欧文明のアドバンテージである「銃・病原菌・鉄」という象徴的なアドバンテージから地理的なアドバンテージを無視して、クレオパトラからガンジー、徳川家康などが同じルールの上で闘うことなった世界の場合どうなるのだろうか?そこでは奇怪に面白い展開を見せるのだ。すなわちガンジーが勝利のために核を開発しリンカーンの都市を攻撃し、クレオパトラがローマ皇帝たちに戦闘機で爆撃を行うという光景や、アフリカの族長が世界銀行を設立し経済的な勝利を上げるという凄まじい世界となり、全ての国がこの現代世界のルールに乗っ取り競争させるグローバリゼーションというものを強烈に戯画化させたものに映る。というよりそれはオレの選んだ偉人のゲームプレイの成果なんだけど。(みんなやってるはず。)


 というわけで西洋文明史観と言うのがあったりまえながらあまりにも強いわけで、「銃・病原菌・鉄」なんかを読みながらその思考方法や歴史の結果まで含めてどうしてか「シヴィライゼーション」を想起するに至り、様々なゲームのジャンルがあるがなんにしても歴史・軍事・経済といったテーマのシミュレーションほどに向こうのロジカルな意識を感じるものはない。

 オレがどっかで見たいのは曼荼羅うんぬんから世界構築がスタートするスタートアジアの仏教など宗教観満載のシミュレーションとか、現実から屈辱を受けた狂人が歴史を覆すために偽史の帝国をつくりテロリズムを行うみたいな、つまりバイオショックインフィニットのカムストックが主人公のコロンビア発展シミュレーションみたいなものという。いや書きながら前者にはゴッドゲームといって「ポピュラス」があり、アジア世界のシミュレーションのルールといえば「カオスシード」などあったのに気付いた・・・
 

2013年5月22日 (水)

「街 運命の交差点」七曜会の設定の元ネタ小説「木曜日だった男」

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 未だにコンシューマーの範囲では伝説的な評価をされるサウンドノベル「街」。そのメインシナリオの一つ「七曜会」に元ネタとなる小説があったというので読んでみた。


 それは「木曜日だった男」という小説で、「ブラウン神父シリーズ」を代表作とするイギリスの探偵小説家・批評家であるチェスタトンによって1905年に書かれた作品なのだが、その内容は探偵小説家らしい一見ミステリー小説の体裁に見えるが、途中からファンタジーとも形而学的とも、皮肉とも付かない展開を見せる内容であったりする。

 まず概略だけ書いてしまえばこれはもう「街」の方が盗んだ設定は本当にそのまま。書かれた時代である20世紀初頭のイギリスが問題としていたアナーキズム(無政府主義、乱暴に今で言えばテロリズム)の秘密結社に警察である主人公が、詩人を名乗っていスパイとして潜りこむという内容なのだが、そこでは月曜日から日曜日までをコードネームに持ち、日曜日がそのヒエラルキーの頂点として指揮をとっており、主人公は木曜日の名前を授かることになる。篠田正志と一日違い!

 さて街の「七曜会」では人が隠し通している社会的地位に関わる過去の犯罪歴などをネタに強請ることで、裏ネタを買い取らせるために莫大な金額を請求するか、七曜会に加入させる代わりに一万円で買い取らせるかというもので、元ネタの「木曜日だった男」の社会背景がアナーキズムと言うのに対し、こちらは90年代中期の日本らしいオウムまたは統一教会といったカルト宗教イメージに加えマルチ商法・ねずみ講といった古いタイプの詐欺を元にしている。何故かこのあたりを書きながらあの頃のたまごっちの匂いを思い出してきた。


 しかし「木曜日だった男」もそんな順当な当時のアナーキズムを元にした探偵小説なのと思いきや別に脅したり破壊活動に講じることはない。それどころか通常のシナリオの展開よりも遥かにラディカルな展開を見せるのである。というのも、主人公である木曜日が、トップの日曜日以外の医者や教授などを名乗る他の曜日の人間と接触していく、という進行は盗んだ元の「七曜会」と同じなのだが、ところがそんな他の曜日の人間たちの正体も全員スパイ目的の警官だったのだ。なんですぐわかんねえんだよ!


 だったら日曜日というのは何者なのか?を6人全員で問い詰めようとするのだが、その時には日曜日は気球で脱出。6人は必死で追いかけていき、遂に日曜日と相対するのだが、そこには現実と幻想が崩壊し木曜日は一つの神を見ることになるという、「七曜会」のラストの方でマルチ商法というかなりがっかりなオチなのに何故宗教的な領域の話になっていくのか?の元ネタの方はその上を行く相当な展開だ。これは「神は世界を6日間で作り、一日休んだ」というキリスト教(または、ユダヤ教)の逸話のチェスタトンのパロディではないかと読め、では日曜日が全能の神というのは世界が作り終えられた後を見守る位置ゆえなのだ。つまり元ネタの方がエスプリ効かせ倒してふざけてるもので「七曜会」の方がバックグラウンドの学識なしで大真面目に作り過ぎてどこかボケてるものだった!ということが比較によって明らかになっていくのだった。



木曜日だった男 一つの悪夢 (光文社古典新訳文庫) [文庫]

2013年5月19日 (日)

現代アドベンチャーゲーム研究・生存編・もしも「神宮寺三郎」の新作や「クロス探偵物語」の完結編が製作されるためにクラウドファンディングにて出資を募うならばADVファンは手を貸す準備をするだろうか?

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アドベンチャー、クラウドファンディング、ダウンロード市場

   ~現代アドベンチャーゲーム生存研究~

 ネットで簡単にシューティングゲームや格闘ゲームといったジャンルの栄光と衰退はどのような立場や場所であれシリアスに、それこそこのジャンルらしく瞬発的に議論されるのだが、アドベンチャーゲーム(以下ADV)というジャンルの栄光と衰退に関してもそのシリアスさの度合いに差は無いと思うがその声はさして大きくなく数が少ない。それでもこのビデオゲームの物語と表現に強く関わるジャンルらしく熟考的になされることが多い。

 さてADVの栄光と衰退、それから再生を考えるに、まず日本のコンシューマーでのADVの現状はやはりダイレクトな市場の結果が要求され、数少ないシリーズばかりしか生き残ることを許されず、セールスや成長規模の結果ゆえに出資が得られず続編を期待されていたシリーズが停止していることも少なくない。


 それは海外であっても例外ないところであるのだが、ところが向こうではパッケージが制約を受ける小売や流通といったリスクを外せるPCやタブレットによるダウンロード市場の活況や、製作資金を工面するために不特定多数から出資を募るウェブサービス「クラウドファンディング」にて有名シリーズや新規タイトルの製作資金を調達しているケースを見ることが少なくない。

 あくまでまだ情報が集まり切っていないオレ自身の印象論程度で恐縮なのだが、マスに向けた市場での勝利は遠ざかっても、コアによる追いかけは未だ強い海外のアドベンチャーゲームが継続または誕生に当たって、コアファン自体が続編や新作を見たくて出資するというクラウドファンディングの重要性は増しているのではないか?と見ている。


 ではこれが日本に置き換えるならば、たとえば「クロス探偵物語」の製作者が完結編を出す為に腰を上げたとして、クラウドで出資を募り、コアファンたちが製作費を支援するということは起こり得るのだろうか?

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2013年5月14日 (火)

「BioShock Infinite」バイオショック・インフィニット感想と考察 「全ての物事は目の前で起こる」偽史と記憶の現代演劇(修正版)

Boi
内容に触れていない簡単なレビューはmk2に書きました。

 最初のバイオショックはプレイヤー=主人公であると言う徹底した一人称での体験を重視したものだった。対して今作「インフィニット」はブッカーという明確なパーソナルを持つ主人公が多彩なAIによって行動するエリザベスと共に空中都市コロンビアの冒険を描いたものとなっているのだ。


 それは舞台が海底都市から天空へと変わったのと同様、プレイヤー=別の他人を操作するという3人称視点への変化を意味する。つまりフルに体験する形よりも、物語を観賞するという立場にシフトしたと言える。

 だがしかし、近年のFFやMGSのように物語を過剰なムービーで進めるような分かりやすい演出によるストーリーテリングではない。本作はシリーズ同様、3人称のブッカーを操作する形とはいえFPSの肝である体験の部分から大きく離れることは無い。どのシーンもほぼリアルタイムで展開されるのだ。その結果、どのような印象だったか?というとそれは「現代演劇」だった。


 そしてそれは単なるストーリーテリングの印象というだけではない。本当に現代演劇の前線が行っている、テーマを重層にさせる作劇と演出などをビデオゲームにて実現させたと見える意味で、本作は異質だ。ということで「演劇」と言う視点による本作の全面的なネタバレと謎解き全開のレビュー。


 

 

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2013年5月 7日 (火)

ドラクエで死んだ仲間をザオリクで生き返らせることができるのに、物語中に死んだ仲間を生き返らせられないのは納得いかない

Caqvduoz

 ドラクエなどで戦闘中に死んだ人間が出てきた時に復活の魔法なりアイテムなりを使えば生き返らせることができるのに、ストーリーの進行で仲間が死んでしまった場合には生き返らせることが出来ないというのはおかしい。だけどそんなことを言っても、大抵のプレイヤーは皮膚感覚的にそれが奇妙なことであるとは思わない。

 物語やキャラクター、表現や演出、世界観の優れたビデオゲームは多数ある。しかし、ビデオゲームにおいて物語や表現が優れていると言ったならば「ではゲームの部分は面白かったのか?」という指摘が巻き起こることも少なくない。


 
 ビデオゲームが提供する物語と表現という部分と、実際にプレイヤーが遊ぶ部分というのを分けて認識されていることが「ストーリーやキャラクターは良かったがゲーム部分が面白くなかった」というような感想を目にすることが多いことから分かる。たいていのプレイヤーは「ストーリーを読む」ということと「ゲームを操作する、解く」ということの二つが分裂していることを理屈で言葉にせずとも皮膚感覚で知っているのだ。


 ビデオゲームはその技術進歩の過程で、グラフィックの進歩などを中心にした世界観の表現の発達など物語と表現の比重が増したわけで、その反動としてゲーム性議論みたいなものが起こり易かったと思われるのだが、その水と油のように反発しあいながらも寄りそう二つの関係の今はどうなっているのだろうか?というわけで、「ストーリー」「ゲームプレイ」の関係についての簡単な考察。

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