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2012年9月30日 (日)

sleeping dogs”スリーピング・ドッグス 香港秘密警察” ではL2または左トリガーを引け/ビデオゲームの香港・プレイ中の感想

Sleeping_dogs1
スリーピング・ドッグス プレイ中の感想 

クリア後のレビューはmk2に投稿させていただきました

 元々「トゥルークライム」シリーズの香港編ということで開発されていた作品だけど、ウィキペディアを見る限り当初のパブリッシャーであったアクティビジョンとの折り合いがつかず開発中止になったところをスクウェア・エニックスが販売権を獲得した、ということでほんとに紆余曲折があった末の発売であったようで、ビデオゲームでの香港の大作は難産に陥るというケースに名を連ねることになった一つであるとも思う。

 というのもビデオゲームが香港を舞台とするとそのケースが希少なのもあるが、振り返ってみれば「クーロンズゲート」「シェンムー」などなど度重なる発売延期の末の発売という経歴を辿っており、 「トゥルークライム・ホンコン」の時点でかなり期待していただけにこうして無事発売できたことは本当に良かった、という色んな感慨がある「スリーピングドッグス」のプレイ中の雑記。

 オレが見てきたゲームの限りでは、ビデオゲームでの香港は常に異質な触感を残す。ジャッキーからジョン・ウーなどの香港映画の娯楽性と対照的に、ゲームでの香港は純粋な娯楽のラインから逸脱してしまった映像の造形またはゲームシステムやコンセプトという面にてどこかしら異形性というのが際立つものが少なくない。

 

 なにしろかつての香港の象徴的な土地の一つ、九龍城砦からインスピレーションを受けたのがあの「クーロンズゲート」であったり、もともと香港のカンフー映画で扱われる中国武術を生かした「バーチャファイター」の番外編でアクションアドベンチャーにしたものだったのにハード移行の流れで異様に作りこまれた仮想現実へと変貌した「シェンムー」などの大作を代表に、まだ「街」みたいな上手くテレビドラマとゲームを融合させる答えが見つかってない時代での実写とアドベンチャーを混ぜて主演が杉本彩という「ワンチャイ・コネクション」などや、果ては香港返還前の時代の嫌がらせのようなオープニングで始まる不謹慎ゲーム「香港97」(詳細こちら) など考えついたものを挙げてみたが、どれもゲームとしての出来不出来を超えた記憶に刺さるものばかりだ。

 「スリーピングドッグス」はセガの「シェンムー2」以来11年ぶり(と思う)の香港を舞台にした大作であるが、5-6時間ほどのストーリー進行度20%くらい触れてみて思うのはGTAベースでかなり洗練された完成度を持つ一方で、そこにビジュアルからゲームデザインに至るまでの決定的な異様さ(と同時に感じる動揺)というのは感じない。潜入捜査官の主人公が潜入先のマフィアにパンツ一枚の状態で「ネズミはお前だろう!」とナタを握られながら疑われるなんて異様なことができるなんていうくらいではセインツロウあたりで通り過ぎた道だ。ガチャガチャをひたすらもくもくとやり続ける芭月涼さんの異様さにはかなわない。かつては、服を脱ぐ自由度すらない。それくらいしかできなかったのだ。

 しかしこれはなにも叩いている訳ではない。むしろ純粋に「やっと香港を舞台に周辺の大作と同水準のものが生まれた」と感じ入るばかりだ。シナリオのベースにしている映画「インファナル・アフェア」からブルース・リー、ジャッキーなどのエレメントをリスペクトと共に編みこむオマージュのセンスも、本作がゲームデザインのベースにしているGTAのロックスター同様のセンスであり、そういう元ネタをさばく洒落た上手さはかつての香港ゲームには全く無いセンスだ。クーロンズゲートでは欠片でさえなかっただろう。

 オレにはこれは良くも悪くも返還後の現代の香港ということをこの仮想の街並みを見るに感じる。もう返還前の象徴的な土地だったもう九龍城砦は無く、クーロンズゲートやシェンムー2の作品の強度を示す舞台だった。それは香港という場のミステリアスな部分・異様さという意味で象徴的であったからだ。

 返還後の香港ゲーム、ということでは2008年の「ストラングルホールド」も印象深い。「男たちの挽き歌」のジョン・ウーとチョウ・ユンファもハリウッド渡っちゃって以降に組むことは無かったんだけど、なんとジョン・ウー自身が監督を務めるというゲームという形でこのタッグが復活したということで、ある意味これが唯一の香港人による香港ゲームとも言え、やっぱこれもビデオゲーム香港の特殊性を示すケースだと言え(やっぱり出来不出来を超えた意味でも言え)、スリーピングドッグスのスローモーションは「マックスペイン」だろ!と言われているが、「マックスペイン」が元ネタにしてるのはジョン・ウーだから、本当のところはあれはストラングルホールドの「テキーラタイム」なんだよ!と思っていた。

 このように強固なGTAベースの上にジョン・ウーもある。ブルース・リーもある。ジャッキーもある。という順当な香港映画のエレメントが昇華され、あのネオンサインが輝く街並み、電線や配管が乱雑に組まれた路地からはやはりかつてのクーロンズゲートやシェンムーが見た未来の続きに触れている感覚がある。発売が難産である、という先人のジンクスを受け継ぎながらも、各方面のエレメントを兼ね備えた形になっている。

 なので、特にシェンムーやクーロンズゲートへの思い入れがあるオレは現在のエンジンによって描かれる香港の屋台街を見ているだけでも感慨深く、それを味わうためにおそらく本作のみ採用されているささいな操作をずっと使ってしまう。コントローラーのL2または左トリガーを引いて、近い視点になって歩くのだ。それはガンガン行って当たり前のオープンワールドで何をしているんだという話だが、意識的に先人の香港ゲームのテンポを再現したい気持ちがある。なにしろ、もうそれらには続編が見込めないのだから。どんな形になっても何らかの続きを観たかったのだ。

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コメント

大変興味深く、共感を覚えながら読ませて頂きました。「左トリガー押しながらプレイ」、自分もしてました。革ジャンジーパン姿で、歩道をゆっくり歩きながらスティックで周辺を見渡すと、ホントにシェンムーの様に見えてくるんですよね。記事中にもありましたが、自分も続編が絶望的と理解しているだけに、どうしてもオープンワールドものに「シェンムーっぽさ」を求めてしまう傾向があるようですね。

>>reddot さん

 スリーピングドッグスはホント現代の香港の都市風景をいかんなく描写しきってるところがやっぱでかいですね。シェンムー芭月涼の格好で闘鶏でスる。これだけでシェンムー3の未来も見える気がしました、

 アジアでのオープンワールドは(おそらくGTA形式では)初ってことで、香港映画コスプレごっこはこのゲームやった人はみんなやったと思いますが、ひたすら歩いてると突き抜けてなにやら「その男、凶暴につき」の北野武映画のような錯覚もします(笑)

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