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2012年2月14日 (火)

コンラッド「闇の奥」はシェイクスピア演劇のように普遍的か?「spec:ops the line」展望

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 「バイオハザード4」「ギアーズオブウォー」などはじめ現代TPSのシステムや構造がかなり洗練されてきた段階に入ると、そろそろそのシステムより導き出される最良の物語や舞台、表現なんかが追求されたものが出てくる段階に入っていると思われ、「シャドウオブザダムド」はTPSでカフカの「城」をやろうとして上手く作り切れなかったと見るけれど、 次に成功するか失敗するか未知数の期待があるのが「spec:ops the line」だ。

 本作は急速な経済成長を遂げた中東における貿易・商業の最大の中心地ドバイを舞台に、ベトナム戦争の時代を独自解釈した映画「地獄の黙示録」、さらにその原作であるコンラッドの「闇の奥」をベースに置いているというもので、現代TPSのストーリーテリングはいかにその物語性を発揮するのだろうか?

 ドバイの中東の砂嵐が吹きすさむ乾燥地帯に屹立する都市光景というのは、前回も「ブレードランナー」が産み落としたと思われる真夜中の雨と霧の中で明滅するネオンライトの都市光景というのが近未来を見つめる想像力ということに繋がっており、ちょっとドバイの画像なんかを検索してみると本当に「CGで作られたみたいな」とか「未来都市のような」というような視点で撮られた写真が数多く見当たる。

 これはオレの勝手な視点には違いないけど、そうしたドバイの風景がもたらすインスピレーションというのがブレードランナーの系譜のビデオゲームの構築する都市風景の幻想に直結しているかに見え、実際上に貼ってあるプロモーション動画を見るに、演出されているかなりの部分にそうしたドバイと言う地の都市光景がもたらす印象に引っ張られたものであるように思う。

 

 そうした、まるで幻想的にすら映る近代都市を舞台に、「地獄の黙示録」さらにはコンラッドの「闇の奥」を現代の目線で解釈した物語となるようなのだ。

 さてこのゲームが下敷きにしている「闇の奥」と「地獄の黙示録」に関して振り返ると、簡単にTPSのストーリーテリング構造に照らし合わせると言うだけでも至ってシンプルなものであり、かつ禍々しいシナリオであると思う。

 両作の基本的な物語は、先進国がアフリカやベトナムといった国を搾取しているという構図で、現地の住民と取引をしていたカーツという男の行方が知れなくなる。主人公はその行方を追って、船に乗って川を下り、生い茂るジャングルの闇の奥に向かい、そこで見たものは原住民の間で神聖化されたカーツの姿だった・・・というものであり、闇の奥とは欧州・米国の植民地的支配の関係の闇、精神の闇など多岐に渡る意味が込められているという。

  ここでゲーム的な符号を単純(あるいはマヌケに映るかもわからないが)に書くなら川を下っていく一本道の流れのなかで、カーツの元に辿りつくまでに数多くのイベントに出くわす、という形であり、まあもっと単純に言ってもRPGの冒険の中で深い闇の奥に住む魔王を討伐しに行くみたいな形であるし、「spec:ops」はそういう物語構造をステージを突破していく形のギアーズやバイオ4のようなTPSに被せていく形になるのだと思う。

 海外情報サイト1UPを翻訳したチョーク・ポイント様の「Spec Ops: The Line プレビュー」を見るに、そうしたTPSによる闇の奥の実現という部分にやはりかなりの部分ウェイトが置かれているのが分かる。なにしろプレビューの感想がシステム以上にプレイヤーに付きつけられるイベントで出すべき行動の是非に掛かっていることで、おそらくはそうしたイベントを突破して行きながらこのゲームにおいてのカーツを目指すことになるのだろう。

 その「闇の奥」を下敷きとした「地獄の黙示録」からのコントラストも書いておくべきだろう。あの映画の特異性というのは平たく書いてしまうとカウンターカルチャー時代で泥沼化したベトナム戦争で、正義も大義も見えないという時代の心象を、異様に内省的な形で映画にしたゆえに賛否の分かれる問題作となったものだ。

 現実の中東情勢もまた解決し切れていない現状であり、やはり正義も大儀も無い戦争であったと判定されている9・11からのイラク戦争のアメリカであったわけで、そうした泥沼の情勢を反映したと想像されるドバイにて、正義や大義を問う展開になるという、まるでマイケル・サンデルの講義をゲームにて実現させたかのような内容となっているようであり、まさに現代の「闇の奥」「地獄の黙示録」を実現させる根拠としてのTPSの進化と時代情勢が揃っていることで、今作のインスピレーションに繋がったのだと思う。

 ということでTPSとしては確実に薄ら暗く、そして内省的な作品になっているというのは確実で、もはやミリタリー関連でものすごいハッピーにゲーム的な面白さとか兵器の描写の精密さを追求しているジャンルはいまやホントゲームくらいしかない時に(いやホントもう、現代の戦争映画で「トップガン」とか「ランボー」みたいなの全く見なくなったと思うし、ほとんど内省的で自己批判的なものが多く目につく。!)、いよいよミリタリーFPS・TPSってのもそんな折り返しになるのか否か?は発売されてどのような反応が起こるのかまでは分からない。

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