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2011年10月31日 (月)

デウス・エクスから感じる、SFにおけるサイバーパンクとビデオゲームの隣接性

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 どーいうわけだか「修正箇所があったために発売直前に延期」というゴタゴタがあり、日本のCEROって?規制とは何か?(笑)と思わされたとはいえ、ようやく発売される「デウス・エクス」。本作は概要や構成、物語を見る限り「マス・エフェクト」的な記号的なSF宇宙冒険譚ではなく、テクノロジーの進化が身体性や内面、ひいてはアイデンティティや自己像にまでに及ぶ「サイバーパンク」と呼ばれるジャンルであるようで、そのジャンルのビデオゲームとの親和性の考察を含めた「デウス・エクス」の展望のエントリ。

 SFというのはザックリと言えば初期には近代科学の発展により夢想される未来や宇宙への展望から始まり、美しいユートピアとしての想像力や、あるいは頽廃したディストピアとしての想像力として発展していきながら、現実にそうした夢想した様々なものが実現されていくことで(まあー簡単に言っちゃえば鉄腕アトムみたいな人型ロボットの空想⇒ASIMOの開発・研究みたいな)、現代科学の発展や研究によって「来るべき未来」というのが実現されていく中で、今度はそうした科学発展した世界の環境が生々しく人間の意識や存在意義自体にどう影響していくのか?ということがテーマとなっていく。それが80年代ごろの映画「ブレード・ランナー」やSF作家ウィリアム・ギブスンの提示した「サイバーパンク」というジャンルに見られる物語性だ。

 同時に、コンピューターメディア全体の鬼子か嫡子か、同じく80年代ごろよりニュータイプの娯楽として、紆余曲折を経て飛躍的に進歩を遂げるビデオゲームというジャンルが並走していった結果、ビデオゲーム側の望む一つの「来るべき未来」として、90年代半ばにさらなる進化として娯楽からいちメディアになろうとすること、例えば映画に近づこうとしたり、アートになろうとしたりの可能性が花開いた初期プレイステーション時代の中でついにビデオゲームとサイバーパンクの強烈な邂逅が起きたと見え、あの「ファイナルファンタジーⅦ」、はたまた「クーロンズゲート」を代表に、「凄い3Dポリゴン」とか「映画みたいなゲーム」と騒がれたあの時代も今振り返ればある意味ではサイバーパンクというものが持っていた生々しい感覚が現実化したものの一つであり、ビデオゲームというものがその感覚の入力装置としてのテクノロジーとして機能することで増幅させていた時代でもあると思う。

 「FFⅦ」が未だ印象深く残る要因は単なる映画的ゲームの実現というだけではなく、そうしたSF史的にも、ビデオゲームの進化史的にも、そして現実のITメディアの進化の背景とも接触していたとも見える歴史的なコンテクストを持ちながら、新しいRPGとして遊びこめるものであったわけ(ここホント重要で、初期プレステ時代限りで消えたシリーズもクリエイターも多い)で、この作品からビデオゲームの進化によって、サイバーパンクの感性が現実化した感覚という部分を引き継いだ意味は大きい。

 テクノロジーの進化と現実化によって、今日のSFでシリアスなのは宇宙へ向かうことだとかロボットの実用化ということ以上に、「あらゆるものを人工的にしていってしまうことで世界観の認識や自我というのはどう変貌するのか?」というテーマであるように近年の小説から映画までとらわれているように思え、さらに言えばそれはもう近未来の事でもなく現在進行形の感覚であり、20数年前にサイバーパンクが提示していた問題というのはこうして時を経て現実的な感覚として立ちはだかり、ビデオゲームの中でのサイバーパンクというのはそうしたテクノロジーが侵略する現実感覚をダイレクトにエンターテインメントにしているものであると考える。

  なんて、ここまで考えながらこれから「デウスエクス」を始めて見よ―と思います(笑)そうです、まだやってねえんです。(笑)

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